もう一人の…
「入るべきか…やめるべきか…」
ななしは優介の部屋の前で悩む
先程優介から連絡が入ったから来たのは良いが、部屋の中から何やら言い争っている声が聞こえている
「誰かいるのかな?でも優介の声しかしないし…」
しかし声は優介の声だけ…というよりも優介が一人芝居をしているような感じだった
「呼ばれたんだし…良いよね?優介ー、入るよ?」
「「ななし!」」
「!?」
ななしは部屋に入るとそこにいた二人を見て固まる
一人はななしを呼んだ張本人である優介で、もう一人は優介によく似ており髪が少し逆立っている事と服装が違う事以外は優介と殆ど同じ人物だった
「(兄弟は…いてなかったよね?)…ねぇ、どっちが優介?」
「俺だよ」「俺だ」
「どういうことなの…」
似たような二人が同時にそう言うものだからななしは混乱する
「騙されちゃ駄目だ、ななし!本物は俺だよ…判るだろ?」
「え、あぁ…うん」
いつもの服装の優介にそう問われ、ななしは少し曖昧ながらも頷いた
そしてもう一人の方に訊ねる
「えっと…貴方は優介のそっくりさん、とか?」
「違う。俺は優介だ」
「本当にどういうことなの…」
どっちも自分が優介だと言いうものだからななしは優介と優介にそっくりな誰かが自分をからかっているのだろうかと考え始めた時、部屋の隅の床に魔方陣らしきものが書かれているのを見つけた
「優介、これは何を…」
「いや…ちょっと、ね。それで何かを間違えちゃったみたいで…気がついたらこうなっていたんだ」
何をしようとしたのかは言いはしなかったが、こんなことになった原因はこれらしい
「で、私が部屋に入る前は何を言い争っていたの?」
「こいつがななしは俺の物だとか言うから…!ななしは俺のだよね?」
「ハッ!俺はお前だ。つまりお前の物は俺の物なんだよ!」
「ふざけるな!」
そして部屋に入る前のように言い争いをしだす二人にななしは疲れ切った表情をして二人を放置してソファに座り頭を抱えた
「とりあえずどっちも優介でFA、と…」
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