ヴァレンタイン・ディ
町では、到るところ色とりどりのリボンに結ばれた、これまた色とりどりの箱の山が目についた。
ロックオンは、一軒の洋菓子店に入る。
ショーケースに並べられた今日の主役である様々なチョコレートをどれにしようかと吟味した。
左から右、右から左。
散々迷って、花をモチーフにした1つに決めた。
店員にその旨を告げると、メッセージ・カードの有無を聞かれる。"Yes"と応え、店員がラッピングしている間に渡されたカードにメッセージを書いた。
書いたカードを綺麗に赤くラッピングされたチョコレートに差してもらい、それを受け取って店を出た。
2月の半ば、この地は寒さのピークを迎え、だんだんと暖かくなるという。
しかし、吐いた息はまだ白く凍った。
足を進める度、冷たい風が剥き出しの頬を突く。
いくらアイルランド出身だといっても、寒いものは寒い。
百貨店の角を曲がり、停めていた愛車に乗り込む。
エンジンをかけ、ハンドルを握った。
但し暖房は入れない。
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