*Short* | ナノ
貴方と予定。




 先ほどから、部屋にはティエリアが本のページを繰る音しか響かない。
白く美しい指先がゆったりとしたリズムで動くのを、ロックオンはティエリアのベッドに寝そべって見ていた。

 ふぅ、と息を吐き出す音の後、パタンとその指先が重く厚い革の表紙を閉じた。


「それで、用件は一体何ですかロックオン。
 用がないなら帰って下さい、鬱陶しい」


 メガネ越しの緋い瞳が向けられる。


「おいおい、一時間も待たせておいて、それはないだろう」

「貴方が勝手に僕の自室のロックを解除し、勝手に僕の部屋に侵入し、勝手に僕のベッドに寝ころんで、勝手に待っていただけでしょう」


言い終えると、ツンと顔を背けてしまう。
確かに、ティエリアの言うとおりである。

 ティエリアらしい物言いにロックオンは苦笑をもらし、よいせっ、と勢いをつけて起き上がる。


ベッドのスプリングが軽く軋む音を出した。




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