Starting-出発-

幸村達が去った後、木の上から飛び降り地面に着地した比嘉の平古場凛は、ディパックに入っていたミニタオルをポケットから取り出して、地面に突き刺さった刃を引き抜いた。


刃の先には土に交じってべっとりとした赤い血と皮膚の欠片が付着している。


「殺気は隠してたのにアレに気づくとは驚いたさぁ」


幸村達が去って行った方に目をやり、それからタオルで刃を拭いて後ろを振り返った。


平古場が隠れていた木の後ろから現れたのは、不動峰の伊武深司だった。


伊武は地面に転がった石ころに付着した血痕をちらりと見てから口を開いた。


「追わないの?」


「今深追いしても仕方ねーらんどぉー。アイツ(わん)以上に勘が鋭いやさぁ」


「さっきの完全に見切ってたよね。…近付いて刺しちゃえばよかったのに。そしたらアレ殺れてたよなぁ…俺だったら確実に殺ってたのに…」


ぼそぼそと呟き始める伊武に、平古場は苦笑を浮かべてBallistic Knife(別名スペツナズ・ナイフ)の刃を柄に差し込みポケットにしまった。


このナイフは平古場に支給された武器で、柄の内部に強力なスプリングを備えており、レバーを押すことで刀を前に飛ばすことができる特殊ナイフだった。


射程距離は10m程で接近戦武器としても使えるが、スプリングを押し込むように刃を装填しなくてはならないので、かなり力がいる。


伊武に支給されたのは小型の懐中電灯で武器としては役に立たないが、一応ポケットの中に入れてある。


「次行くか。えーと…お前の名前何だっけ?」


「はあ……さっさと行こ」


深いため息をついてスタスタと歩いて行く伊武を、平古場は慌てて追いかけるのだった。


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