最終章 天上
「うう……っうあ……お兄ちゃん……っ」
ユキは嗚咽を漏らしながら一人薄暗い廊下を歩き続けていた。
理科室から逃げ出した後別館へ向かおうとしたが、別館の扉には鍵が掛かっていた。
扉を叩いても叫んでも助けは来なかった。
これまでずっと希望を失わずに足掻き続けていたユキだったが、その瞬間とうとう心が折れた。
目につくのは朽ち果てた遺体ばかり。
生きているのは自分だけ。
泣こうが喚こうがその声は誰にも届かない。
静まり返った校舎内に響くのは自分の足音と嗚咽と雨の音だけだ。
「っ……うう……お兄ちゃん……お兄ちゃあん……!!」
一人取り残された教室でユキは声を上げて泣いた。
暗闇の中で、ただひたすら泣き叫ぶ。
ここから出して、誰か私を見つけて、私は此処にいると。
もう手も足も動かない。
何も見えない。
独りぼっち。
「うあああああ……お兄ちゃあん……!!」
孤独な叫び声だけがいつまでも響き渡っていた。
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