If…堕ちた帝王side.B
銃を突き付けられた鳳は、動揺する事無くそっと宍戸を地面に寝かせた。
それからディパックを置いて跡部に向き直る。
「跡部部長…いったい何のつもりで……」
「俺様は死ぬ訳にはいかねぇんだよ。あいつを…ユキを救うまではな」
銃を構えながら跡部は鳳に目で合図をした。
先程のメモでのやり取りを思い出した鳳は、ポケットからドライバーを取り出すと宍戸のそばに跪いて跡部に目をやった。
跡部は無言のまま頷く。
そして2回、引き金を引いた。
「何をするんですか!!」
「言ったはずだ!これしか手はねぇと!!」
「目的の為なら仲間がどうなってもいいと、そういう事ですか部長!!」
「ユキの命より優先されることなんざ俺様にはねぇんだよ!!」
再び銃声が鳴り響き、鳳は大きく息を吸い込んで叫んだ。
「し、宍戸さん!!!どうして宍戸さんを!!」
鳳の言葉で無事にミッションが遂行された事を知り、跡部は無言で頷いた。
銃声も激しい言い争いも、全てはミッション遂行の為の演技。
鳳によって首輪を外された宍戸は"死亡者"になった。
勿論、跡部が放った弾丸は宍戸には当たっていない。
「次はお前の番だ、鳳」
跡部の言葉に鳳は頷き、持っていたドライバーを跡部に渡した。
それを受け取ってから跡部はガバメントに弾を補充して鳳に合図を送った。
「殺されるくらいなら…俺は自分の手で決着をつけます!」
そう叫んで鳳はポケットに入れていたボイスレコーダーのスイッチを入れた。
このボイスレコーダーは鳳が民家で見つけた物で、何かの役に立つかもしれないとディパックの中に入れていた物だった。
先程、宍戸の死を偽装する為に跡部が撃ったガバメントの銃声を録音し、それを再生する事でこれ以上の弾丸を消費する事なく跡部は鳳の死を偽装した。
これで宍戸と鳳は死亡し爆弾も解除され首輪も外されたが、跡部の首輪にはまだ爆弾も盗聴器も残っている為、声で会話する事はできない。
跡部はガバメントをしまうと予め用意してあったメモを取り出して、鳳のボイスレコーダーと交換した。
「…後は立海の奴等か」
政府に感付かれないよう細心の注意を払いながら鳳に目で合図を送る。
鳳は声を出す事はできないので、ただ跡部の無事を祈り静かに頷いた。
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