Blue Sky Without End-はてしなく青い空-

最終日 午後8時40分。


Eー5にさしかかる森の中、仁王は空のマガジンを取り替えて声を上げた。


「出てきんしゃい、ユキ、越前。もう逃げ場はないぜよ」


暗闇の中、わずかに人の気配を感じる。


銃を手に意識を集中する仁王の斜め前、少し離れた木の後ろにリョーマはいた。


もうすでに体力は限界を超え、精神力のみで無理やり体を動かしている状態だった。


それでもリョーマの瞳に迷いはなく、じっと身を潜めて仁王が動くのを待った。


「わかっとるじゃろ。どうせ時間が来れば全員お陀仏じゃ。この爆弾でな」


仁王は銃を構えたまま、右手で首輪を示して言った。


「どうせもう逃げ場はないんじゃ。おとなしく出てきんしゃい」


仁王がもう一度言った時、前方の草むらでガサリと音がしてリョーマが姿を現した。


「別に…。逃げたつもりはないけど」


「……何のつもりじゃ?お前さん、人の言うことにおとなしく従うタイプじゃないじゃろ」


仁王が銃口を向けたまま言うと、リョーマは真っ直ぐ仁王を見て笑みを浮かべた。


「まあね」


「……」


立海の詐欺師、仁王雅治でもリョーマの笑みの裏まではわからなかった。


しかし近くにユキの姿がないことに気づき、ちらりと暗闇に目をやった。


「…ユキは逃がしたんか?」


「さあね。…まあアンタの言うとおり、どっち道逃げ場はないんだから気にする必要ないんじゃない?」


「……」


二人は向かい合ったまま一歩も動かない。


このまま仁王が銃の引き金を引けば、それでリョーマは死ぬというのに、なぜかリョーマの顔から笑みが消えない。


「…何を企んどるんじゃ?…お前さん、武器も持ってないはずじゃろ」


「見てわかんない?」


そう言ってリョーマはひらりと両手を上げる。


もともとリョーマは灯台で出会った時から何も持っていなかった。


武器どころかディパックさえも。


おそらく途中で誰かに襲われ、その時になくしたのだろう。


しかし…


「…お前さん、赤也が来るのを待っとるんか?」


ポツリと呟くように仁王が言えば、リョーマは「さあね」と素っ気なく答える。


「…無駄じゃよ。赤也はお前さんには協力しない。それはお前さんもわかっとるじゃろ」


「さあ…。もしかしたら気が変わるかもしれないじゃん」


「……」


「それに、俺に協力しなくたって、アンタを狙う可能性だってあるんじゃないの?…ここにはもう四人しかいないんだし」


リョーマは笑みを浮かべたままそう言った。


「………」


仁王は銃を構えたまま黙り込む。


…やがて雨の勢いが強まってきた頃。


仁王が一歩前に出て言った。


「お前さんが何を企んどるのかは俺にもわからんが、これで終わりにさせてもらうぜよ」


「……」


リョーマは今度は何も言わなかった。


「……終わりじゃ」


そう言って仁王が引き金を引いた瞬間、銃声とほぼ同時に仁王の手首に何かが当たった。


「!」


それにより銃弾はわずかにリョーマの右にそれ、その一瞬の隙をついてリョーマは仁王の銃を押さえた。


「っ!」


銃声が響き渡り、リョーマの足元と水たまりに銃弾が撃ち込まれる。


「…っ無駄じゃよ越前、力は俺の方が上じゃ!」


仁王の言葉通り、リョーマの腕は振り払われ、再び銃口が向けられる。


「リョーマ君!!!」


草むらからユキが飛び出した瞬間、仁王の体に衝撃が走った。


そしてそのまま前方にある大木にぶつかり、崩れ落ちるようにしてその場に倒れた。

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