Raid-襲撃-
小雨が降り注ぐ午前10時35分。
妹を探しに観光協会を後にした跡部は、忍足、ブン太と共に、ある建物の前にいた。
前…と言ってもまだだいぶ距離がある。
少なくとも建物の中にいる人間には気づかれない距離である。
「こっちからはよお見えへんかったわ。窓もカーテンが閉まっとったし」
「俺も似たようなもんだったけど、うっすら人影のようなもんが見えた」
二人の報告を聞いて跡部はしばらく考えた後、銃を手にして言った。
「人影の数は?」
「…一人…じゃないと思う。たぶんだけど」
「…あてにならねぇな」
「仕方ねぇだろぃ。雨のせいでよく見えねぇんだって」
「……」
「せやけど、いつまでもここにおる訳にはいかへんやろ。長居すれば気づかれるかもしれん」
「…仕方ねぇな。二人以上いれば、少なくとも千石や亜久津って可能性は低い」
「ああ。…行くか?」
「忍足、お前は裏へ回れ」
「わかった」
忍足は頷いて建物の裏へ回り込む。
「俺は?」
「正面だ」
「げっ…マジかよ」
明らかに嫌そうな顔をするブン太に、跡部はふっと笑い言った。
「誰が一人で行けと言った。…俺様もだ」
三人はそれぞれ建物へと近づき、忍足は裏口付近で待機した。
その間に跡部とブン太は正面入り口へと近づき、壁を背にして立った。
「……」
中から物音は聞こえないが、誰かいるのは間違いない。
跡部は目でブン太に合図をし、銃を握った。
そしてもう片方の手で静かにドアをノックした。
一回…二回……
三回ノックをすると、中から声が聞こえた。
「誰だ?」
声は男のようだったが、誰かまではわからなかった。
跡部はもう一度銃を握り直し、告げた。
「氷帝学園部長、跡部景吾だ。……妹を探してる。知っているのなら教えろ」
警戒しつつ威圧的な声で言うと、中から返事が聞こえた。
「裏へ回れ。…裏口を開ける」
跡部とブン太は一旦ドアから離れ、木々の中を通って忍足が待つ裏口へ向かった。
「!、跡部、どうやった?」
「裏口を開けるだとよ」
「!」
驚く忍足の前で、静かにドアが開いた。
「お前は…!」
「入って下さい、跡部部長…忍足先輩」
鳳はそう言って三人を招き入れた。
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