Encounter-遭遇-
跡部達が立海メンバーと合流し、移動を始めた頃。
分校近くの丘の上に氷帝学園8番宍戸亮と、9番鳳長太郎がいた。
二人は同じ氷帝学園の仲間を探して度々移動を繰り返していたが、未だ誰とも会えずにいた。
「とうとう王者も崩れたか…くそっなんで止まらねぇんだ」
ここまでずっと希望を失わずにいた二人だったが、最終日となる六日目を迎え、焦りの色が見え始めていた。
そんな中、午前0時の放送で立海大附属中の幸村と真田の名前が上がり、いよいよ焦りは濃くなっていた。
「宍戸さん…これからどうするんですか?このまま部長達を探し続けても……」
不安げに言う鳳に、宍戸は返す言葉が見つからなかった。
跡部達がこの死のゲームに乗っているとは思っていなかったが、自分達の中にやる気になっている誰かがいることは確かなのだ。
「…とにかく一度どっかに身を隠すか。ここじゃ目立つしな」
「そうですね…」
二人はディパックを肩に掛け、移動を始めたが、木々の向こうに人影が見えてすぐに身をかがめた。
「誰だ…っ」
「…わかりません。暗くて何も……」
暗闇の中目を凝らすが、そこにいるのが誰なのか二人にはわからなかった。
銃を手にしたまま少しずつ距離を縮めると、ふと一瞬、月明かりの中に見慣れたウェアが見えた。
「!」
もう一度目を凝らすと、それは確かに自分達が着ているのと同じ、氷帝のウェアだった。
体格から言って跡部や忍足ではない。
だとすると…残っているのは一人だけ。
「ジロー……?お前、ジローか!?」
思わずそう声をかけると、暗闇の中で人影が動いた。
…現れたのは、確かに同じ氷帝学園の芥川慈郎だった。
誰かに襲われたのか、全身に傷を負い、足元もおぼつかない様子だった。
「芥川先輩!」
二人は慌てて駆け寄り、宍戸が倒れそうになる芥川の体を支えた。
「ジロー!大丈夫かよ!」
「一体何があったんですか?」
心配する二人だったが、芥川はただぼんやりと二人を見ているだけで何も言わなかった。
出血で意識がもうろうとしているのかもしれない。
見れば、首筋にも切られた痕があり、まだ血が止まっていなかった。
「長太郎、タオル貸せ!」
「はいっ」
鳳はディパックを下ろして慌ててタオルを取り出す。
それを受け取った宍戸は芥川を木を背にして座らせ、その首にタオルを押し当てた。
「おい、ジロー、しっかりしろ!」
「ひどい出血……先輩、一度診療所に戻った方が…」
鳳の言葉に宍戸もそうした方がいいかもしれない、と思い、ディパックを鳳に渡した。
ここから診療所まで多少距離はあるが、行けなくはない。
「俺がジローを背負う」
「はい」
鳳は頷いて辺りを警戒しながら二人の前に立つ。
「ジロー、死んだら承知しねぇからな」
そう言って宍戸は銃をベルトに差して芥川を背負うとするが、その時、ぴくりと芥川の手が動き、次の瞬間、宍戸の腕に熱が走った。
「な…っ」
目を見開く二人の前で、芥川はナイフを手に立ち上がった。
そして、そのまま茫然としている宍戸に切りかかった。
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