破滅への輪舞曲

「けど、これからどうするん?跡部」


ようやくユキが落ち着きを取り戻したところで、忍足は跡部に尋ねた。


「島から脱出をはかるにしても、千石が邪魔だ。立海の奴等と合流して全員で千石に掛かるのが一番だが……」


そう跡部が言った時だった。


かすかに銃声が聞こえた。


「どこからや!」


「落ち着け、ここからはまだ遠い。…まさか千石か?」


「ねえお兄ちゃん、もしかして蓮二君たち……」


「……」


その頃、島の中央にある民家では仁王達が千石の襲撃を受けていた。


ブン太を庇ったジャッカルが負傷し、仁王も右腕に銃弾が貫通するという大怪我を負っていた。


それでもどうにか民家を囲うブロック塀を盾にして、抵抗していた。


「ジャッカル!大丈夫か?」


「あ、ああ…俺のことはいい、それより…逃げられそうなのか?」


「いや、無理だろうな。一人や二人ならともかく、全員で逃げ切れる相手ではない」


「おい仁王、お前腕、大丈夫なのかよっ」


「そんな心配しとる場合じゃないぜよ」


そう仁王が言った瞬間、ぱらら…と音がして、仁王たちは慌てて地面に伏せた。


「くそっどうすりゃいいんだよ…!」


「やばいぜ…このままじゃ俺達の方が負ける」


その時、ふと柳は近くに止まっているトラックに目を止めた。


「あれを利用しよう」


「あれって?」


「まさかあのトラックか?」


「あれに乗って逃げんのは無理だろ」


「いや、あれを爆発させるんだ。」


「!」


「エンジン部分を狙えば、炎上させることができる。そうすれば千石の足止めはできるだろう。負傷している二人を連れながらこのまま戦うのは危険だ」


柳の提案に反対する者はいなかった。


「けど、この距離じゃ俺達まで巻き添えくうぞ…」


「ああ。千石の足止めをしながら徐々に離れるしかない」


「できるのか?そんなこと」


「やるしかないぜよ。どうせこのままじゃみんなお陀仏じゃしのう」


「…そうだな」


「仁王、片腕で狙えるか?」


柳の問いに、仁王はちらりとトラックに目をやり、笑みを浮かべる。


「問題ないぜよ」


弾が貫通した右腕は、もはや感覚もなく、地面に血だまりができるほど出血していた。


「丸井、仁王の止血を頼む」


柳はそう言って銃を撃った。


ブン太はディパックからタオルを取り出すと、それを仁王の腕に巻き付け、ぎゅっと絞った。


「これで止まるとは思えねぇけど」


「十分じゃ」


「痛くねぇのかよ」


「たぶん麻痺しとるんじゃろ」


「ったく、病院ぐらい置いとけってんだ」


文句を言いながらブン太は止血の処置を施した。


「ジャッカル、頼む」


「わかった」


柳が弾切れになり、ジャッカルが交替して銃を撃つ。


「よし、このまま少しずつ離れよう」


柳の指示で仁王たちは千石を足止めしながら、後退する。


「どうだ?」


「…念の為、もう少しさがろう」


「わかった」


交替で撃ちながら徐々に下がり、そして隣の民家の庭まで移動したところで、四人は足を止めた。


「仁王、任せたぞ」


仁王は片腕で銃を構えて意識を集中させる。


そして引き金を引いた。


だが弾は残念ながらエンジン部分には当たらなかった。


隣で千石の足止めをしている柳達も、無言のまま仁王を見守る。


そして二発目。


弾はトラックへと飛んでいき、次の瞬間、激しい爆発音と共に燃え上がった。


しかし、それと同時に仁王達の前にある塀に何かがぶつかり、仁王は叫んだ。


「伏せろ!!!!」

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