最期の言葉を君に

「赤也!!」


ユキは慌てて赤也に駆け寄った。


肩に手をやると、何かぬるっとした感触がした。


「!?」


見てみるとそれは血だった。


あっという間に地面へと広がっていく。


「赤也!!どうして…この傷っ」


ふとそこでユキは千石から逃げる時に聞こえたパンッという音を思い出した。


「撃たれた…の?」


茫然としながら赤也を見る。


「そんな…赤也!!なんで黙ってたの!」


言いながらポロッと涙が零れ落ちた。


赤也は震える手でそれを拭うと、無理やり笑みを浮かべて言った。


「泣くなよ…俺…お前の涙と…真田副部長の鉄拳には…よ、弱いん…だからさ」


だがユキの涙は止まらなかった。


…わかっていたからだ。


もう…


赤也は助からないことを。


それでなくとも今まで何発もの銃弾をくらい、崖から転落し、酷い傷を負っていた。


とっくに限界は超えていたはず。


それでも赤也は私のことを守る為に、必死で…撃たれたことも黙って…


「赤也…ごめ…なさ……っ私…」


「なんでお前が謝んだよ…ユキは何も…悪くねぇじゃんか…」


「っ……赤也…」


いくら流しても涙は止まることを知らず、ポタポタと血に濡れた赤也の立海ウェアの上に零れ落ちた。


「約束…守れなくてゴメンな…俺…もう動けねぇや…」


赤也はそう言って苦笑する。


ユキはギュッと赤也の手を握った。


その手からだんだんと力が抜けていくのが、はっきりとわかった。


「悪ぃ……俺…先、行くわ…でもお前は来んなよ」


ユキはもう言葉もなく、ただ首を振った。


言いたいことはたくさんあった。


伝えたいこともたくさんあった。


でも、声にならなかった。


ただ強く、赤也の手を握りしめることしか出来なかった。


どうか伝わるように…


赤也がどこへも行ってしまわないように…


私の前から消えてしまわないように…


そのぬくもりを引き止めるかのように、強く、強く握った。

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