潰えた希望

「う…っゴホゴホッ」


何が起きたのかわからぬまま、ユキはむせ返り、口に手を当てた。


ズキンッと腹部が痛む。


外傷はないようだが、相当なショックを受けたみたいで腹部だけでなく、全身が痛かった。


「何……何が起きたの?」


煙で何も見えない。


ふとその時、赤也の咳き込む声が聞こえてユキは声を頼りに駆け寄った。


どうなっているのかよくわからないが、足場が悪く、何度も転びそうになった。


「赤也!!」


「クソッ…何なんだよっ」


「赤也、大丈夫?」


「ユキ!」


赤也はユキの姿を見て慌てて立ち上がり駆け寄った。


「よかった無事で…一体何が起こったの?」


「わかんねぇ…つーか煙で1メートル先も見えねぇよ」


二人ははぐれないように手を繋いで辺りを見回した。


「宍戸せんぱーい!」


「亮ー、長太郎くーん!」


煙の中叫ぶが、二人の返事は聞こえなかった。


「何も見えねぇし…動くに動けねぇな」


「うん…」


二人はそのまましばらく立ち尽くした。


やがてスーッと煙が風に流れていき、うっすらと物の輪郭が見えるようになった。


そして…


「え……?」


二人は言葉を失った。


すぐ近くにあったはずの診療所は崩壊し、瓦礫の山と化している。


停まっていたトラックは炎上し、横倒しになっていて、その近くの路上に亜久津が倒れていた。


ここからではよくわからないが、ピクリとも動かないところを見ると、死んでいるのかもしれない。


そして…瓦礫の上、おそらくは壁だったものの上に宍戸亮が倒れていた。


うつ伏せの状態で頭から血を流し、その血が下の瓦礫へとポタポタ落ちている。


「りょ…う……?」


宍戸の隣、一段下の瓦礫の隙間に、氷帝のレギュラージャージが挟まっていた。


端しか残っていないが、血でべっとり濡れている。


おそらく、鳳の物だ。


「な…んで……っ」


「…っ」


絶句する二人の耳に、あの軽い声が聞こえた。


「また会ったね〜ユキちゃん、切原クン」


ゆっくりと振り返った二人は。今度こそ絶望に包まれた。

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