繋いだ手と手、君との約束

「…赤也」


ユキはベッドで眠る赤也を見てぎゅっと手を握った。


あれから赤也を診療所に運び、3人で出来る限りの手当をしたが、まだ赤也の意識は戻っていない。


もうすでに外はすっかり明るくなっている。


「赤也…お願い、目を覚まして」


あれだけの傷だ。


今こうして生きている事自体信じ難い程の、酷い傷。


「……赤也」


と、そこへ水の入った洗面器とタオルを持った鳳がやって来た。


「まだ…意識戻りませんか?」


「…うん…何の反応もないの」


「……」


鳳はベッドの横の台に洗面器を置いて、その中にタオルを入れた。


「今、宍戸さんが見張りをしてくれてますから…ユキさん、少し休んだ方がいいですよ」


しかしユキはふるふると首を振り、赤也の手を握った。


「私は平気…」


「ちっとも平気って顔してないですよ。熱だってあるし。心配なのはわかりますけど、ユキさんが倒れたら元も子もないじゃないですか」


気遣ってくれる鳳に感謝しつつ、ユキは言った。


「ごめんね…でも私…赤也の側にいたいの」


「ユキさん…」


「ずっと…守ってくれたの。赤也がいなかったら、私とっくに死んでた」


「……」


「私、何も出来なくて…怖がってばかりで…赤也はそんな私を庇ってこんな傷を…」


じわっと目に涙が溜まるが、ユキは手で拭って赤也を見つめた。


「親友なのに…私は赤也に何もしてあげられないの。迷惑かけてばっかりで…それなのに赤也はいつも私のこと心配してくれて」


「…わかります。大会で見かけた時、すごく楽しそうに話してましたし…ユキさんが体調崩した時も、真っ先に駆け寄って助けてましたしね」


ユキは少し微笑んで強く手を握った。


「こんな私を…赤也は親友だって言ってくれたの。何の力にもなってあげられないのに、そんな事関係なしに側にいてくれて…」


ポロッとユキの目から涙が零れ落ちた。


「だから…だから私…生きなきゃって…。こんな私を守ってくれる赤也の為に…絶対生きなきゃって…っ」


ユキは肩を震わせて俯く。


「最後まで諦めちゃダメだって…絶対…絶対みんなで一緒に帰るって約束したから…もう…幸村君も真田君も…柳生君もいないけど…でも…」


すると、ポンッとユキの手に何かが当たった。


「?」


ふと見てみると、自分の手に赤也の手が重ねられていた。


そのまま視線を前へとやると、いつものように人懐っこい笑みを浮かべた赤也の姿があった。


「当たり前じゃん。約束、破ったりしたら、きっと真田副部長の鉄拳飛んでくるぜ」


「!、赤也…?…っ…赤也ぁ!!!」


ユキは大粒の涙を零して赤也を抱きしめた。


「痛てててっっ!!!おいユキ!痛ぇって!ちょっと待…っ」


痛がる赤也だったが、ユキは心の底から嬉しそうに笑っていた。

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