同じ頃、宍戸達のいる診療所からずっと北。


展望台で一人の少女が泣き叫んでいた。


「いやああああーっっ!!!!!」


放送で告げられた自分の片割れ、兄・景吾の名。


「嘘!!嘘よそんなのっ…お兄ちゃんが死んだなんてそんな……そんなことある訳ない!!!」


兄の死を信じられず、ユキは叫ぶ。


そんな彼女の姿にジャッカルとブン太も何も言えなかった。


「侑君だってそんな簡単に死んだりしないわ!蓮ニ君も!…そんなの…ありえない…!」


しかし言葉とは裏腹に涙が溢れ出す。


「お兄ちゃんは…何でも完璧にこなしちゃう凄い人なんだよ?絶対死んだりしない…絶対……ぜったい…」


ユキはそう呟いて泣き崩れた。


たとえどんなに否定しようと、兄が死んだことは変わらない。


…変えられないのだ。


「っああああああ!!!」


「っおい、ユキ!どこ行くんだよ!!」


「待て!!」


ブン太達が止める間もなく、ユキは前も見ずに走り出した。


現実のすべてを否定するかのように、ただ森の中へとその姿を消して行った。

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