歪み始めた過去の僕

「うっ…痛ぇ…っ」


酷く重たい体を引きずり、赤也は近くの木に背を預けて座った。


何とか崖下から這いずってここまで来たが、そろそろ本当にヤバかった。


腹部からはドクドクと血が流れ出し、当てていた手を見れば真っ赤に染まっていた。


「やべぇかもこれ…血、止まんねぇし…っ」


灯台から逃げる時に撃たれた右足はもうほとんど感覚すらない。


…これ、助かったとしてももうテニスは出来そうにねぇな。


そんなことが頭をよぎったが、まぁ…どうでもいっかとすぐに消した。


どうせもうテニスで倒したかった3人の内2人は、ここにいないのだから。


「ユキ、大丈夫なんかな」


落ちる直前見たユキの顔を思い出し、赤也はグッと痛みをこらえて立ち上がった。


こんな所でへばってらんねぇよな…


ユキは今一人なんだし。


丸井先輩とかと会えてればいいけど…


そう上手くはいかねぇか。


「千石は倒したってのに…まだあの不良がいるし…」


もしユキが亜久津に出会ったら簡単に殺されてしまうだろう。


「ックショー、こんくらい…!」


歯をくいしばってズルズルと足を引きずりながら前へと進む。


力を入れれば入れる程、ドクドクと腹部から血が流れ出す。


そのせいで頭がぼーっとし、視界も狭くなる。


「あ〜……マジで…ヤバい……かも」


痛みと熱で意識が朦朧とする。


「っ!」


グラッと体が前に倒れた。


「……」


しかし痛みも衝撃もなかった。


なんだ俺、体の感覚すらおかしくなっちまってたのか?


そう思った時、ふと地面が遠いことに気づいた。


立っているようだ。


「?」


不思議に思っていると、


「あまり無理をするな。それ以上血を流したら死ぬぞ」


と、冷静な声で言われた。

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