喪失

しばらく歩いたところで、ふと柳は赤也を振り返り言った。


「千石が死んだのなら、千石が持っていたディパックはどうした?」


赤也は息を切らしたまま柳を見上げ、あ…と口を開いた。


「俺…あんま見て来なかったけど…確か…千石の近くに落ちてたような…」


「……」


柳は少し考えた後、方向転換し歩き出した。


「ど、どこ行くんスか?」


「千石の荷物を調べる」


「!」


「お前も薄々気づいているだろうが、奴が坂持の言っていた特待生という可能性が高い」


「…幸村部長もそう言ってました。俺達、立海を狙うのは特待生の条件かもしれないって」


「ああ…。それを確かめる」


「でもユキが…」


「焦っても見つかりはしない。それに、特待生はもう一人いる」


「!、そうだ!確かサカモチの奴、二人いるって」


「千石の持ち物を調べれば、特待生について何かわかるかもしれない。…対処法もな」


「……」


赤也は無言で頷いた。


ユキのことは心配だったが、今は落ち着くことが大事だ、と柳の背中を見て理解した。


赤也が落ちた辺りまで戻ると、そこに半壊した建物があった。


その建物の柱の半分くらいの所に、見るも無残な千石の死体があった。


「っ…」


赤也は吐き気を感じて目を背ける。


一方柳はじっと千石の死体を見ていた。


「……なるほど。だから"防具"か」


ふと柳が言い、赤也は怪訝そうな顔をした。


「何がっスか」


柳はそれには答えず、ディパックを下ろし、倒れた箪笥へと近づいた。


「手伝え赤也」


「な、何するんスか?」


「千石の死体を下ろす」


「!?」


柳の言葉に赤也はギョッとする。


「いいから手伝え。時間がない」


「っ…」


赤也は顔を歪めるが、言われた通り行動した。

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