立海ハロウィン

10月。それは待ちに待ったハロウィンの季節。

ある者は仮装し、ある者はお菓子作りに励み、子供達は目を輝かせてこの言葉を叫ぶ。

"Trick or treat!"

「……で?なんで10月に"肝試し"?」

「そりゃお前……"ハロウィン"だからじゃねえの?」

「いや、普通ハロウィンで肝試しはやらねえだろ。あれって収穫祭だぞ。肝試しで何を収穫するんだよ」

「何を?……うーん、何だろ。カボチャ?幸村君、わかる?」

「そうだなあ……"魂"かな?」

「「怖っ」」

幸村の返答にブン太とジャッカルが震える。

3人がいるのは薄暗い神社の境内。

物陰に身を隠しながら目的の人物が現れるのを今か今かと待っていた。

海原祭も終わり秋も深まって来た今日、立海男子テニス部の面々は話し合いの末に決まった"肝試し"を実行していた。

幸村、ブン太、ジャッカルの3人は脅かし役で、ターゲットである彼女らが来るのを待っている。

時間的にそろそろ来るはずなのだが……。

「ん?お、来たみたいだぜ」

「二人共、準備はいいかい?」

「いつでもОK」

「ああ」

足音と共に話し声が近づいて来る。

やがて鳥居の向こうからユキとレギュラー唯一の2年生である切原赤也が姿を現した。

少し遅れて誘導役の柳がやって来る。

「うわあ……夜の神社って何だかちょっと不気味だね」

「ちょっとってレベルかこれ?」

「どうだ?少しは雰囲気が出ているか?」

「うん、これならバッチリだよ!絶対みんな驚くと思う」

「真田副部長とか腰抜かしたりして」

「えー、真田君に限ってそれはないと思うけど……」

石段に並んだ蝋燭や作り物の頭蓋骨を見て二人は面白そうに笑う。

その様子を見て柳は満足そうに頷き、用意してあった提灯を手に取った。

「では行くぞ。ルートを一通り見て回って問題がないか確認してくれ。何か意見があったらどんどん発言してくれていい」

「了解っス」

「下見だけど、何かちょっとわくわくしちゃうね」

そう言って笑い合う彼女と赤也は、柳の思惑もこれが下見ではなく"本番"だという事も何も知らない。

純粋な反応を見たいという幸村達のわがままと、できるだけ正確なデータを取りたいという柳の思惑によって、可哀想な後輩二人が生贄に選ばれてしまったのだ。

そんな事とは露知らず、二人は意気揚々と神社の奥へと入って行く。

「うん、大丈夫そうだね。それじゃあブン太、頼んだよ」

「了解!」

幸村の指示を受けてブン太が自分の持ち場へと向かう。

それを確認してジャッカルが仁王達に電話を掛け合図を送った。

……10月31日。

ハロウィンの幕は上がったばかりだ。

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