それぞれの道-choose-

「おい嘘だろ…」


目の前に転がる不気味なオブジェを前にして、ジャッカル桑原は呻いた。


その隣に立つ同じ立海のダブルスペア・丸井ブン太は"それ"を見た瞬間に強烈な吐き気に襲われて顔を背けた。


ジャッカルはディパックを背負い、胸に抱えるようにして89式小銃を持っていた。


丸井の方は背中にブローニングM1910を差している。


二人から少し離れたところに、#10ペアの幸村精市と切原赤也が立っていた。


ここに来る途中で偶然ジャッカル達に出会い、そのまま4人で南西へと向かっていたのだが、赤也が草むらに転がったディパックを見つけて、そしてそのオブジェを発見したのだ。


幸村は注意深く辺りを見回した後、ディパックを背負い直して"それ"に近付いた。


手枷で繋がれた赤也も問答無用で近付くことになる。


竹林の入り口に並んだ大きな岩にもたれ掛かるようにして、聖ルドルフの野村拓也が息絶えていた。


首にはくっきりと紐の痕が残っており、野村が絞殺されたことを物語っている。


その隣には後頭部に鎌が刺さったままうつ伏せで倒れている山吹中の新渡米稲吉の姿がある。


背後から一撃で倒されたようで、頭の他には倒れたときについた傷しか見当たらなかった。


襲撃者は野村達を見つけて背後から忍び寄り、一人は鎌、もう一人は紐のようなもので野村達に襲い掛かったのだ。


反撃の隙さえも与えずに…。


「近くに人の気配はないが、急いでここから離れよう」


幸村の意見に反対する者もなく、4人は足早にその場を去った。


竹林の中を歩きながら赤也は自分の手が震えていることに気づいて強く握り締めた。


6時の放送でも4人の名前が告げられていたが、人が死んだという事実が現実離れしていてまともに受け入れていなかった。


しかし、実際に遺体を目撃してしまった以上、否が応でも受け入れるしかない。


これは現実で、ここはまさしく戦場であることを。


「何なんだよ…いったい誰がやったんだ…」


歩きながらブン太が呟いた。


「誰だかわからねぇが、全く容赦がないってことは間違いないみてぇだな」


ジャッカルの言葉に幸村も頷く。


「ああ。これではっきりした。確実にこのプログラムに乗った人物がいる。生き残る為に他のペアを狩ることを決めた人間が…」


「くそっ…誰なんだよ…!」


赤也は苛立ちを抑えるように自分の掌に拳をぶつけた。


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