始まりの合図-countdown-
引き戸の隣にあったキーパッドに番号を入力して部屋を出た二人は、真っ直ぐに伸びた廊下を進んでつきあたりの非常口から外に出た。
二人がいたのは島の中央にある分校のようだったが、"殺し合い"がルールだと言われた以上、校内をゆっくり探索する気にはなれなかった。
こんな馬鹿げたプログラムに乗る人物がいるとは思えなかったが、万が一ということもある。
「真っ暗だね…」
出発したのは早朝だったにも関わらず、外はもう暗かった。
ディパックの中に入っていた腕時計は、もうすぐ2時になる。
「とりあえずどこか落ち着ける所を探そうか。跡部クン達を探すにしても、こんなに暗くちゃ何も見えないしね」
「うん…そうだね」
こくりと頷いてユキは持っていた地図に目をやった。
ここから一番近い建物は南西にある農協と北西にある民家だ。
どちらも距離はたいして変わらない。
「どっちに行く?」
「そうだなぁ…こういう時はやっぱり」
そう言うと千石は地図を地面に広げ、近くに落ちていた木の枝を拾ってその上に乗せ手を離した。
枝はぽとりと横に倒れ、南西を示した。
「決まりだね」
「でも…本当に大丈夫かな。この島にいるのはプログラムに選ばれた人だけだってラジオでは言ってたけど、もしかしたらどこかに政府の人達がいて、私達を見張ってるんじゃ…」
考えれば考える程嫌な想像ばかりが膨らんでいく。
「それはないと思うよ」
きっぱりと断言する千石を見て、ユキは訝しげな顔をする。
「どうしてわかるの?」
ユキが尋ねると千石はズボンの後ろポケットに無理やりねじ込んだベレッタを示して言った。
「こんな物を用意してるってことは、少なくとも俺達が手を出せるような距離にはいないってことだよ。だって、こんな孤島でどこかに隠れたっていつかは見つかるし、もしその相手が武器を持ってたらあっさり返り討ちに遭うかもしれないでしょ?」
「あ…そっか」
「たぶんこの手枷の中に爆弾とは別に他の機能も入れてるんじゃない?俺達が逃げ出さないかどうか監視する為にさ」
「…そうか。そうよね。どこかで見られてるのかと思うと何だか怖いな…」
ユキは寒気を感じて体を震わせた。
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