見付けた花は眩しくて、なのに愛おしくて
生まれ変わっても、寄り添う事が出来るだろうか?





Flower
(どうか、その隣に)





移り変わる季節に、いるはずのない姿を探して、一人眠る夢でようやくお前を見付ける


何時になれば終わる?
何時になれば触れる事が出来る?


朝がくればいなくなり、短すぎる逢瀬はあまりにも切ない


天下を取るよりもずっと簡単な事だろう?
なのに、どうして、そんな簡単な事すら叶えられねェ


止まれば良いのに、時間も俺の心臓も、無意味に動き続けるこの世界も


こんな世界ならオレはいらねェ


いや、オレがいらないのか、それとも世界がオレを必要としていないのか



「政宗?」

「あぁ、Sorry」



うっすらと、目を開けると名前がオレの顔を不安そうに覗き込んでいた


オレの存在を確かめるように頬にあてられたその指先は暖かく、惹かれるままに指を伸ばして絡める


嬉しそうに笑う名前の顔に、自身の口角が自然と上がるのがわかった


寝転んだままだった身体を起こして、霞を引き寄せる


抱きしめれば香る名前の香り


触れた名前の心臓は煩いくらいにドクンと音を立てて、その存在を主張する



「I love you・・・好き過ぎてたまんねェ」

「・・・うん」



自分も、だと答えないのはお前の優しさ
自分も、だと応えないのはお前の残酷さ


言えない言葉を飲み込むように、オレは名前の唇に唇を寄せた


舌に舌を絡めて、これ以上近くはなれねェのに、もう一度名前を抱く腕に力を込める


小さく息を漏らして、名前がオレの肩にもたれ掛かり呟いた



「政宗、今日は月が丸いね」

「HA!そこは綺麗だ、って言う所だろ」

「そうかなー、だって丸いから、欠けてないから、綺麗なんだよ」



名前がそう告げた瞬間、空気が変わっていく
今までのオレ達を包んでいたような甘い空気はもうない


代わりに名前の顔が、瞳が・・・悲しみに揺れた



「お前、何、言って・・・」



ごめんね、と力無く呟いた名前の瞳からポタリポタリと雫が落ちる


止めろ、頼むから言うんじゃねェ・・・



「今まで、一人にさせてごめんね」

「Shit!」

「もうすぐ逢えるから・・・今度はずっと一緒だから」



名前の姿がどんどん滲んで、霞んで見えなくなる


それはあいつが泣いているからか、それともオレが泣いているからか



夢だろうが何だろうが、名前は俺を幸せにしてはくれねェらしい



繋ぎ止めようにも既に名前の姿はなく、


次にこの左目が映したのはオレの背中を守りつづけた右目の姿



「Hey、小十郎・・・何て顔してやがんだ」

「政宗様・・・いかれるのですか?」

「・・・さぁな」



再び闇へと沈む意識
もう何も聞こえず、何も見えねェ



「・・・名前が迎えに来たのですね」



そう呟いた小十郎の声が、オレに届く事はなかった



お前のいない世界は虚しい終わりの果てで
悲しみに暮れる時間は、気が遠くなるくらいだった


無情に過ぎる季節で、戻れぬ世界にしがみついても、失った日々が戻る事はない


哀しみでお前が取り戻せるのなら気がふれるまで泣いてやるのに


もう一度逢えるのなら、触れられるのなら、例えこの身が地獄の業火に焼かれても構わないのに


生まれ変わるなら寄り添い、添い遂げられるような・・・そんな存在に───

















政宗、と甘い声がオレを困ったように呼ぶ


柔らかい手が逃れようとやんわりオレを叩く



「政宗?そろそろ起きなくて良いの?」

「No problem」

「・・・じゃあ、せめて離して」

「ハッ、それも出来ない相談だな」

「もう、しょうがないなー」



オレの右手に頭を乗せて
オレの左側に身体を横たえて
オレの左腕に拘束されたまま名前が困ったように、はにかんで笑う


やっと見付けた想い焦がれた新しい世界が、今始まる


どうやらオレの最期の願いは、今この瞬間に隣りで笑うコイツに届いたらしい



(もう二度と離さねェよ。覚悟は出来てんだろうな・・・You see?)


END