ひらり、ひらりと舞い落ちる桜が人の心を和ませるというのなら、少しはこの二人の仲を取り持ってくれても良いのにな───
桜日和に犬猿な二人と
(少しは仲良くして)
「名前、やはり花見とは日本の伝統的な行事ですよね・・・ということで六道家の伝統的な花見から部外者はとっとと出て行って下さい」
「ちょっと、お兄ちゃん!」
「やだなー、骸君。そのうち名前は六道じゃなくなるんだから、六道家って言っても骸君だけだね」
「もう、白蘭まで!」
「名前は黙っていて下さい!名前は永遠に僕と同じ六道です!嫁になんて一生出しませんからね!」
私を間に挟んで、何時も通り言い争いを繰り広げる二人
ただ、桜が見たいと呟いただけなのに何故こんな事に・・・
白蘭と付き合い出す前までは、毎年、お兄ちゃんと犬ちゃん達としていたお花見
でも今年は白蘭と見たいなーって思っていたのに・・・
「骸君、桜の木の下には死体が埋まってるらしいじゃん。何だったら今から埋めてあげようか?勿論、君を」
「クフフ、やれるものならどうぞ。返り討ちにして差し上げますよ」
仲が悪いというか、もはや犬猿の仲である二人が顔を合わせてしまったからには、正直既にお花見どころではない
もう少し仲良くしてくれても良いのに・・・
そう思いつつ私は、今だ言い争う二人を気にする事なく、諦めにも似た気持ちで、目の前のコップに手を伸ばした
◆◇◆◇◆
「ちょっと、名前、飲み過ぎですよ」
「え?」
お兄ちゃんにそう言われて気付いた頃には、言い争いも一段落ついていたようで
・・・というより白蘭がお兄ちゃんの相手をするのが面倒になったから、というのが正しいかもしれない
ただ、そんな事にまで気付かないほど、私の脳はアルコールに支配されてしまっていたらしい
「ふーん。名前、意外と弱いんだ」
そう呟いた白蘭の声が遠くで聞こえてしまう程に───
「おやおや?貴方は何も知らないんですね。名前はそんなにアルコールがいける口ではありませんよ」
そう自慢げに話すお兄ちゃんに、白蘭の機嫌が悪くならないことを祈りながら目を閉じれば
同時に視界がぐらついて、お兄ちゃんの肩にもたれ掛かるような体勢になる
聞こえたのは
名前、大丈夫ですか?、と 妙に嬉しそうなお兄ちゃんの声
でも、それは
「名前、触れるならこっちでしょ?」
白蘭の私を引き寄せる腕と耳元で囁かれた甘い声に一瞬で掻き消されて、
「何するんですか!」
悲痛な響きに変わった
(でも、まぁ、今ならアルコールのせいに出来るかな?)
そう思って、恐る恐る白蘭の首に手を伸ばして触れるだけのキスを一つ
うっすらと見えた三白眼が、嬉しそうに細められたのは、そのすぐ後
お兄ちゃんが灰になったのも、それと同時
ひらひらと舞う桜と、目に映る白
「名前、良いよ、寝てても」
優しく響く白蘭の声と、その腕に
包まれるように、誘われるように私は自然と瞼を閉じた
(ハッ!名前、名前の貞操は無事ですか?!)
(シーッ・・・骸君、静かにしないと名前が起きちゃうじゃん)
(あ、すみません・・・じゃなくて、何で貴方の腕の中で名前が寝てるんですか!今すぐ離れなさい!)
END
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