もしも貴方がいなければ、私は此処にはいなかった
もしも貴方がいなければ、私はあの人に出逢えなかった
独占欲の強いあの人には内緒だけれど、本当はね、大好きです───
世界で二番目に
愛する人
(絶え間無く鳴る感謝の音)
「で?」
「・・・えっと、どんなのが良いかなーって」
「だからってそれを僕に聞く?」
「・・・だよね」
お兄ちゃんの誕生日の話を白蘭にすれば、白蘭がすっごく嫌そうな顔をした
私の前で表情を作ったりしないから、それはそれで嬉しいんだけど、お兄ちゃんをそれほどまでに嫌いなんだ、と思うとやっぱり複雑
まぁ、会う度に白蘭を勝手に敵視してるお兄ちゃんが喧嘩を吹っ掛けるから、仕方ないと言えば仕方ないのだろうけど・・・
「他の皆はもうプレゼント決めてるみたいなんだけど、私だけ決まってなくて」
思えば、私は誰かの誕生日だとかそういう行事の時に、決まって悩んでしまうタイプなのか中々決めれない
「ふーん。・・・なら名前、コレ骸君にあげれば喜ぶよ」
「え?・・・いや流石にコレはちょっと」
いかにもお兄ちゃんの事なんて全く興味ないといった仕種で、白蘭が私に渡したもの・・・それは自分の食べかけのマシュマロ達が入った袋
あれ?ダメだった?、何て言いながら笑う白蘭の姿は全然冗談には見えなかった
「骸君も僕も、同じモノを欲し続けてるけど、ソレは僕のだから骸君にはあげないよ」
突然、思い付いたように、ふわりと私を引き寄せて、頬に触れる白蘭の掌の感触
交差する視線の色は相変わらず優しい
「お兄ちゃんだけじゃなくて、白蘭も欲しいもの?」
でも、二人が共通して欲しがるようなモノが思い浮かばない私は、もう一度白蘭に向かって尋ねる
「わからない?」
逆に尋ね返されて、わからない、と首を縦に振れば白蘭が苦笑した
「今、僕の腕の中にいるじゃん」
そう呟いた白蘭の舌が私の瞼をなぞる
その感触に反射的に瞳を閉じて、もう片方の瞳で白蘭を捉えれば、
「骸君と一緒だなんて認めたくないけどさ、名前がいることが1番のプレゼントなんじゃないかなー」
白蘭の腕が腰に絡み付いた
ゆっくりその背中に腕をまわせば、僅かに力が込められたように思う
「・・・仕方ないからその日だけは骸君の側にいても良いよ」
骸君がいなければ、名前はこうして僕の隣にいなかったかもしれないしね、と白蘭の唇が紡ぐ
───それは自身の愛する人がこの人で良かったと、改めて思った瞬間でもあった
◆◇◆◇◆
「お兄ちゃん」
「名前!」
日頃の感謝を込めて、男性特有のその背中に抱き着けば
お兄ちゃんからは驚きと喜びを含んだような声が発せられた
何度となく追いかけたその背中
何度となく見つめて来たその背中
それは相変わらず温かく大きくて、その鼓動を伝えて来る
「どうしたんですか?名前から僕に甘えて来るなんて珍しいですね」
「今日はお兄ちゃんにとって、そして私にとっても特別な日だから・・・お祝いの前に感謝を込めて、ね」
生まれて来てくれて、何時も皆を守ってくれて本当にありがとう、お兄ちゃん
例えば貴方がいなかったなら
例えば貴方と血が繋がっていなかったなら
私は此処にはいなかったし、白蘭という大切な人に出逢う事もなかった
白蘭には内緒だけれど、たぶん私の初恋は、
強くて、優しくて、格好良くて、何時も守ってくれたお兄ちゃんだったんだよ?
(何か面白くないなぁ・・・)
(白蘭さん?どうしたんですか?)
(名前ー!愛してます!一生嫁になんかやりませんからね!)
(もう、お兄ちゃんってば)
END
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