どんなに貴方に愛されていたか
どんなに自分が貴方に守られていたか
今になって改めてわかった
恐怖を色付ける光
(それは貴方でした)
「白蘭ー、ちょっと出かけて来ても良い?」
ソファーに座っている白蘭の首に両手をまわして、尋ねてみる
最近、白蘭は私を外に出してくれなくなった
今までだって、外に出る時はずっと白蘭と一緒だったけれど、最近の白蘭はいつもに増して過保護になったような気がする
「駄目」
一応、駄目元で言ってみたら、思った通り、笑顔で断られた
「どうして?」
「んー、どうしても」
はっきりとした理由を、白蘭は言ってはくれない
「白蘭ーお願いー」
「そんな可愛い声を出しても、駄目なものは駄目だよ」
意外と私の事を頑固だとか言うわりには、白蘭も結構強情な所があると思う
何て言うか、唯我独尊というかジャイアニズムとかいう言葉が見事に当て嵌まる人
「名前、何か欲しい物があるのなら買って来させるよ?」
「ううん、良い」
最近、美味しいジェラートのお店が出来たらしい
(雑誌に載ってた)
白蘭と一緒に行きたいのは山々だけど、白蘭は最近忙しそうで、私の我が儘に付き合わせる訳にはいかないし
(でもやっぱり食べたいっ!)
ジェラートの誘惑に負けた私は、白蘭が仕事で外出してる時を見計らって飛び出した
でもこの時、素直に白蘭の言うことを聞いていたら、あんなことにはならなかったんだよね
(いつだって、白蘭の言う事に間違いはなかったはずなのに)
◆◇◆◇◆
「んー!やっぱり美味しい」
思わず声に出る程の美味しさ
流石に雑誌に載るほど有名なだけある
私はご機嫌にジェラートを食べ歩きをしていた
あっ、白蘭にお土産でも買ってかえろうっと!
(でも私はわかっていなかったんだ・・・どんなに白蘭の妻という立場が、危険なものだったのか)
それを思い知らされる事件はすぐに起きた
少しだけ近道をしようと、裏通りのような道に入った時、後ろから布で口元を覆われた
「っ!」
(だ、れ?)
急速に襲ってくる眠気
眠ったらダメだってわかっていたのに、身体は言う事をきいてくれなかった
◆◇◆◇◆
「正チャン、名前知らない?」
「・・・僕が知るわけないじゃないですか」
帰ったら、いつも出迎えてくれる名前が見当たらなかった
一緒にいた正チャンに聞いても、うんざりした顔をするだけ
「正チャン、言うようになったね」
軽く笑うと、正チャンはお腹を押さえて青い顔をする
「白蘭さん、名前の前でもそんな鬼畜なんですか・・・」
そう言って、正チャンは名前を憐れむような顔をした
「正チャン?」
軽く殺気を送って、正チャンを虐めてやろうとしたその時
「白蘭さん!大変です!」
息を切らして、いかにも慌てている様子のレオ君が走って来た
「お、レオ君、どうしたの?」
「名前さんが、名前さんが!」
「・・・名前がどうしたの」
名前の名前が出た途端、自分の顔色が変わったのがわかる
それと同時に、隣で正チャンが息をのんだのがわかった
「・・・そう」
名前の事をレオ君に聞いた
それと同時にその場の空気が凍る
「随分、ふざけた事してくれたよね」
「白蘭さん?」
自分でも無意識のうちに、殺気が溢れた
名前の事になると抑えが利かないみたいだ
「楽に死ねると思わないで欲しいな」
僕を横目で見た正チャンが「血の雨が降る・・・」怯えたように呟いた
(僕の名前に手を出すって事が、どれだけ罪が重いのかもわからないヤツは下種の中の下種・・・汚い手で名前に触れたのかと思うと虫ずが走る。愛しき人よ、もう少し待ってて)
END
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