今年も色んな事があったねと振り返れば、どんな時も記憶と共に貴方がいる
過ぎ行く季節と
新しき季節
(まだ見ぬ季節に贈る)
名前の妊娠が発覚してからというもの、白蘭さんの過保護っぷりは輪をかけて酷くなった
「白蘭さん、今年の総纏めの報告書と新年のファミリーパーティーについての・・・」
正直言って、最近はあまり白蘭さんの部屋に行きたくない
(いや、前から行きたくはなかったが・・・)
ゆっくりとドアを開ければ、その瞬間に何かが飛んで来た
同時に額がじわりと滲む
「な、」
思わず白蘭さんを睨みつければ、白蘭さんは唇に人差し指を当てて笑っていた
目は相変わらず笑っていなくて、正チャン煩くしたらどうなるかわかってるよね?、と物語っている
恐る恐る僕に向かって飛んで来た"何か"の招待を確かめると、その正体は有り得ない事にマシュマロ
(マシュマロが凶器になるのは、絶対白蘭さんくらいだ)
あの白蘭さんがそこまでして自身の部屋の静けさを保っておきたい理由なんて、ただ一つしか考えられない
ため息を一つ付いてもう一度白蘭さんに目を向けると、白蘭さんの膝にその正体が・・・
白蘭さんの膝に頭を乗せて目を閉じている名前
最近、悪阻が酷くなって来ているせいか、その顔色は悪い
白蘭さんが名前の額を撫でるその手が、白蘭さんのものとは思えないくらい優しく、まるで心配しているかのように僕の目には映る
(どうせ、その優しさは名前限定だ)
「白蘭さん、これに目を通しておいて下さい」
極力、声を抑えて用件を白蘭さんに伝える
書類を黙って片手で受け取った白蘭さん
・・・・・・が、次の瞬間、白蘭さんの口から信じられない言葉が出た
「正チャン、今年は新年のファミリーパーティーやんなきゃダメ?」
「は?」
「だって、今年は何時もに増してやりたくないんだよねー」
ね、やめとこうよ、と笑う白蘭さんに軽い殺気を覚える
(でも、戦闘になったら明らかに白蘭さんには勝てない・・・ふざけてても化け物みたいに強いのが白蘭さんだからな)
結局、今年も最後まで白蘭さん達に振り回された
(どうせ、新年のファミリーパーティーをしたくないって言ってる理由も、体調を崩してる名前を出席させなくて済むように、そしてそんな名前の側にいたいからなんでしょう、白蘭さん)
◆◇◆◇◆
「ん、」
ようやく覚醒した意識
私に触れている手が白蘭の物以外考えられなくて、起き上がろうとした
でも、それは白蘭によって止められる
「名前、まだ無茶しちゃダメだよ」
「ごめん・・・じゃあもう少しだけこうしてても良い?」
「もちろん」
白蘭の言葉に甘えて、もう一度、白蘭の膝に逆戻り
すると白蘭の手がまた優しく降ってくる
「白蘭、今年も最後なのにこんな調子でごめんね」
髪を優しく撫でる白蘭の手が嬉しくて、でもやっぱり申し訳なくて、そう言えば
「名前、何言ってんの。半分以上は僕のせいみたいなものだよ」
白蘭は優しく目を細めて、一瞬だけ私の唇に自身の唇を合わせた
「さて、名前の体調がマシになったら、用意させた年越蕎麦でも食いに行こうか?」
「うん!」
今年も色んな事があったけれど、貴方がいたから全てが振り返れば輝いて
新しい年は新しい命に逢える素敵な年になりますように
これからもよろしくと、愛してるを込めて
(白蘭、来年もよろしくね)
(違うよ、名前。来年だけじゃなくて一生よろしくだよ)
END
←