これは罰なのか
誰かの物を欲しがってーーー結局守る事も、自分から手放す事も出来なかった俺への




AMBER
ACT11:何も出来なかった、
ただ愛するだけで





当然と言えば当然なのだ
間違っても彼女が俺の物になる日は来なかった


名前を俺がどんなに愛しても、彼女は俺の先に違う幻影を見ていたに過ぎない


俺は骸が羨ましかった
自分を犠牲にしても良いと、名前が想う位に愛された骸が・・・


でも、今はお前が羨ましいよ、白蘭・・・


名前の胎内に自分の種を植え付ける事が出来たお前が


(相手が骸ならまだ救われただろうか・・・こんなにも自分の超直感を憎んだ事はない)


記憶を塗り替えたとはいえ、名前に1番愛されたのは俺でもなく、そして骸でもなく、白蘭なのだから・・・



「ツナ、ど、う、しよう」



今にも泣きそうな顔で、俺に縋る名前
その瞳は不安に押し潰されそうな程揺れて



「大丈夫。でもさ名前・・・もう名前の中で答えは出てるだろ?」



一言言えば良い
父親が違っても、俺が名前と子供を守ると・・・
でも、名前はそんな答えは望んじゃいないんだ


所詮、俺は偽善者になれない偽善者だよ



「私、の、答え?」

「うん、名前は名前の答えに従えば良い」



名前が落ち着くように頭を撫でる


(こんな形でしか俺は名前に触れる事が許されないから)



「名前が好きなのは・・・愛してるのは俺でも、そして骸でもないんだろう?」



そう言えば、名前の瞳は大きく見開かれた
何でわかったのか、って顔をしてる

(愛してたから、愛してるから)



「でも、白蘭は違うから・・・」



自分だけが愛してしまったと、嘆く名前の表情が曇る


(違うよ、名前・・・自分だけが愛してしまったのは名前じゃなく俺)



「・・・白蘭も名前と同じ想いだよ」

「ツナ?」



それもツナの超直感?と言葉を紡ぐ名前は泣きながら笑っていて、最後にありがとうと呟いた



俺は名前の泣き顔が嫌いで


(泣かせる事しか出来なかったから)


俺は名前の笑顔が大好きで


(思えば俺が好きになったのは名前の笑顔だった)


最後に見せてくれたのが俺の嫌いな顔と、大好きな顔だなんて、君はなんて残酷で、そしてなんて優しいのだろう



◆◇◆◇◆




「気が済んだか、ダメツナ」

「・・・リボーン」



名前に別れを告げて、出ると待っていたのは俺を鍛えた家庭教師



「これでやっと、名前を解放してやれる」



そう告げた途端、眼を霞ませた物の正体は容易に理解出来て
じわりと侵食されて、頬を伝う



「・・・名前の産む子はいずれボンゴレとミルフィオーレの橋渡しになる」



お前はボスとしてすべき事をしろ、と頭を軽く叩かれた


さよなら愛しき人
最後まで謝る事も、再び愛してると口にすることも出来なかったけれど、君が誰よりも幸せになることを心から祈ってるよ



◆◇◆◇◆




「あー、いい加減名前に逢いたくなったなー」



ポツリと呟いた自分の本音
無性に逢いたいと願う気持ち


正チャンもいないから答える人間はいなかったけれど、早く名前をこの腕に抱きしめたいと再確認するには充分だった


(伝えなきゃ、誰かを傷付ける事になっても、伝えない方が時に残酷なんだってわかったから)


END