君は知っていますか?
変わる気配のない、この僕の想いを
君は見ていますか?
醜さの増したこの世界を




Secret
(今も見付けられずに
さ迷い続ける)





「骸さん、最近寒くなって来ましたねー」



季節だと今は一応秋だと言うのに、最近は寒さが増したように思える


その証拠に、僕の隣にいる名前は寒さに身を縮めて呟いた



「クフフ、そうですね・・・まぁ、もうすぐ冬だから仕方ありませんよ」



寒そうにしている名前を自分の元に引き寄せて、瞼に唇を落としながら温める



「骸さん、暖かいです」



すると幾分かマシになったのか、目を閉じて僕に擦り寄る名前
その靡く髪に指を絡める



「それは良かった。名前、冬になったら何がしたいですか?」

「そうですねー、骸さんと一緒に初雪が見たいです!」



季節が変わったら何がしたいのか、と尋ねれば、名前は一瞬だけ考えた後、そう答えた



「おやおや、随分と安上がりな願いですね」


その答えに、彼女にだけ見せる微笑みを向けて笑うと


「安上がりなんかじゃないですよ」


名前は笑顔で呟いた



名前、こんな事を言うのは僕らしくないと、君は笑うでしょうね


「骸さんらしくないですよ」、と


でもこんな僕にも、今ならわかる気がします


君が、安上がりで、そして、いとも簡単に叶うような事を願った意味が・・・



「骸さん?」

「おや?名前、どうしました?」


伺うように尋ねる名前に優しく返す


「もしかして、疲れてるんですか?」



名前は、心配気な瞳を僕に向け、僕の顔に手を添えて顔を覗き込む



「・・・そうかも、しれませんね」



少し、間を空けて答えれば、名前は触れるだけのキスをした



「元気になれるおまじないですよ!」



その後、「使います?」と自分の膝を叩いて僕を招く


それに短く答えて、名前の柔らかい膝を枕代わりに横たわる


そして目を閉じると、今度は名前が僕の髪を撫で始めた



「骸さん、あまり無理しないで下さい・・・」



そう呟く名前の声が、遠くで聞こえたのは気のせいではないだろう




◆◇◆◇◆




再び、目を開けると名前の姿は跡形もなく消えていた


その代わりに、僕の足元や、周りは血の海だった


そして、あちらこちらに醜い屍が放置されている
(おやおや、またやってしまいましたか・・・)


その状況に、既に慣れてしまっているせいか、特に何も感じはしない



でもただ一つ、たった一つだけ慣れない事がある



名前、そこから見る僕の姿は、君の瞳にはどう映っていますか?


僕はまだ、君の愛してくれた僕のままでいれているでしょうか?


君がいなくなって僕の世界は色を失いました
信じられないですよね
全てがモノクロなんですよ


僕が醜いと思い、でも他でもない君が、まだ捨てたものではないと教えてくれたこの世界は、色を付ける人間がいなくなったというのに、何事もなかったかのように周り続ける



僕にとっては欠けてはならなかった存在も、世界から見ればそうでもなかったらしい
そんな世界ならいっそ滅びてしまえば良い


名前、血で血を洗い流す事しか、出来ない僕を、どうか笑い飛ばして下さい


すでに手遅れかもしれませんが、どうかその前に・・・



「骸さん、来年の誕生日は何が欲しいですか?」



今年の僕の誕生日にそう言った君は、初めて僕に愛を教えてくれた人で、初めて、君に逢うために僕は生まれて来たのだと思う事が出来ました



「そうですね、来年も名前が良いです」

「っ!」



軽い冗談のつもりで言った言葉に、顔を赤く染めた名前


今も僕が望むのは、君と共にある日々
欲しいものなど他にない


どうか、この想いが空に浮かんだ君に届く事を今はただ祈るばかり



(最期にありがとうと呟いた名前は泣きたい位に美しく、切ない位に愛おしかった───自分に幻覚をかけてまで君に逢いたいと願う僕を、紺碧の海に浮かんだ君はどんな想いで見つめているのでしょうか?)


END




TO:悠さん!
フリリクご協力ありがとうございました!
悠さんのご希望を一応全部入れては見ましたが、あまりの悲惨さに申し訳なさで一杯です
悠さんのみ煮るなり焼くなり苦情なりどうぞ(ガタブル)