彼女が瀕死の重傷だと言うのは見ればすぐにわかった
その残された時間の短さも




モノクロ世界
しき



結局、僕の自己満足の彼女への忠告は彼女に伝わる事はなかった


「名前チャンにはこの任務は無理だね」



(そう言ったのはただ彼女を失いたくなかったから・・・あぁ何て滑稽)



「名前チャン?」



血まみれの彼女に向かって声をかける
すると、彼女はうつろげな眼差しで僕を見た



「・・・随分派手にやられちゃったね」



普段から白い肌
でも今日は血の気を失って、ひどく青白い
思わず、手を伸ばしたそこはいつものような温かさがなかった



「・・・白、蘭、さ、ま」



掠れた声で彼女は僕を呼ぶ
いつものように甘い声ではなく、辛そうな声で
そんな姿に思わず眉間に皺を寄せた



「名前チャン、まさか死なないよね?」



まるで自分自身を言いきかせるかのような、彼女への問い掛け
でも彼女は微笑むばかり
その姿さえ酷く美しい



「・・・君は幸せにはなれないよ。やる事をやってくれてない」



僕の側から消えるなんてそんな勝手なこと
まだ君にしか出来ない事が山ほどあるのに


それでも彼女が涙を浮かべて幸せそうに笑うから抱きしめずにはいられなかった


自分の隊服が彼女の血にそまっていく


最期の最後まで君は僕を自身の色で染めて逝くんだね

冷たくなった君にくちづけを


その声がもう僕の名前を呼ぶのも
その身体を抱きしめる事が出来るのも
僕の記憶の中だけになってしまうけど



「・・・おやすみ、名前チャン。せめて最期は良い夢を・・・」



END