いつも見ていたその表情
でも、そこに込められた想いには気付けないまま
手を伸ばせば
届くと信じてた
(それはこれから始まる物語)
私の上司は変わっていると思う
若いし、顔が異常なまでに整っているというのもあるけれど、何より自由な人
白蘭様と呼ばれる事を嫌がるし、不満げな顔をする
(他の人にはそんな顔はしないらしいのに!)
「白蘭様、書類にサインを・・・」
そう言いかけて止める
白蘭様が呑気に欠伸をしていたから
「お、名前チャン」
最初から気付いていたくせに、まるで今、気付いたとでもいうようなフリをする白蘭様
あえてその事には触れずに、再度、書類にサインが欲しいと伝えると
「書類って婚姻届け?」
って笑いながら返された
何 で す と ?!
驚いて目を見開く私に、勿論、名前チャンの名前が書いてあるんだよねーと、当の本人はそれはそれは素敵に笑っていらっしゃる
まただ・・・いつも白蘭様にはからかわれてばかりで、振り回されてばかり・・・
「そうだ。ついでに飯でも食い行く?」
返事もしてないのに、オマケに彼の言うついでにの意味もわからないのに、どんどん勝手に話しを進めていく白蘭様
「いや、白蘭様・・・仕事が大量に溜まっていて、外出出来そうもないですよ」
正一様は半泣き状態だったし、そう言う私も最近忙しくて余り寝れていない
(それなのに、何処までこの人は自由なんだ!)
「あー、そうなの?でもそんなの後回しで良いから」
たまには息抜きしないと壊れちゃうよ?、と呟いて白蘭様は突然私の腕を引いた
咄嗟の出来事に反応出来ないまま、白蘭様になだれ込む形になる
余りにも恥ずかしくて、重力に逆らって、白蘭様から離れようとすると、目の前がぐらついてソレは叶わなかった
「・・・ほら」
私の異変に気付いたのか、不機嫌さを表に出して、白蘭様はその長く骨張った綺麗な指で、私の目の下を撫でる
そこにはうっすらと隈が出来ていた
「そんなに名前チャンが頑張る必要なんてないよ」
「っ!」
そう白蘭様に言われて、やることをやっていれば幸せになれると言われたのに、それすら出来ない私は用無しなのだろうかと、思うと悲しくなった
でもその声色が優しくて、まるで言い聞かせるような言い方だったから何も言えなくなる
「君の疲れた顔は見たくないからね」
そして次に紡がれた言葉に息が詰まった
そのまま白蘭様はうっすらと出来た私の隈に舌を這わせる
「びゃ、白蘭様!」
思わず抗議の声を上げると、白蘭様は
「早く疲れが取れるおまじない」
いつもと変わらない顔で笑った
その姿に胸がドクドクと鳴ってうるさい
(あぁ、この人は笑いながら私の恋心を奪っていく)
「いい加減、部下なんて卒業しなよ、名前」
そして甘い声で囁いて、絶対に離そうとしないんだ
「・・・白蘭」
悔しくて呼び捨てで名前を呼んだら、待ってましたと言わんばかりに唇を塞がれた
結局、私はこの人の掌で踊らされたまま
(名前、書類何て物で眠らないより、僕と良いことして朝日でも拝む?)
(え、いや、全力で遠慮します!)
(・・・拒否権なんて与えた覚えないよ)
END
TO:刹チャン!
相互記念にプレゼント!
これからも仲良くして下さい!
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