ミルフィオーレファミリーのメイドとして働き出して、早くも一ヶ月
此処はお給料も良いし、先輩方も優しくて満足しています
ただ、一つの事を除いては




My precious darling!
かわいい人!




それは・・何故か私のご主人様であり、ミルフィオーレファミリーのボスである白蘭様は、私にだけ意地悪だというです



「名前チャン、こっちも拭いといてね」

「はい、ただいま!」



毎回毎回、白蘭様のプライベートルームや、普段白蘭様がお使いになっている職務室のお掃除をするのは私一人


あれだけの広いお部屋を、一人でするのは大変だっただろうと、先輩メイドに聞いてみたことがある


すると彼女達は一人で白蘭様のお部屋を掃除した事はないし、掃除をする時に、同じ部屋に白蘭様がいた事はないと言うではありませんか!


(一体どういう事ですか、白蘭様!私だけ何故こんな仕打ちなんでしょう)



この前なんか、


「名前チャン、この辺まだ汚れてるよ。僕が良いって言うまで、掃除してね」



って姑みたいな事を言われて、中々、自分の部屋に帰してもらえなかったし
わざと掃除した所を汚されるし


もしかして私って相当、白蘭様に嫌われてる?



「あ、名前チャンごめん」



ぼーっと白蘭様に今までされてきた事を考えていると

バシャっという音と、ガランという音を立てて転がる、雑巾を絞るために用意していたバケツ


そして私の目の前には白蘭様の長い足が見えた



「・・・白蘭さ、ま?」



一体何が起こったのか理解出来ず、私は白蘭様を見上げる



「ごめんね、名前チャン。間違ってバケツ蹴っちゃった」


(絶対嘘だ!)


「そ、そんな」

「ん?名前チャンは僕がわざとしたとでも?」

(絶対、そうですよね!)いいえ、滅相もございません!」

「そう、なら良いけど」



白蘭様は笑って私の様子を見ていて、何だか白蘭様にここまで嫌われてる自分が惨めになって泣きそうになった



(泣いたら負けだぞ自分!)



「・・・白蘭様は、そんなに私が嫌いなのですか?」



思い切って白蘭様に尋ねる
すると白蘭様は珍しく笑っていなくて、一瞬驚いた顔をされた



「いつもいつも私に意地悪なさるし、私にいたらない点があるのでしたらおっしゃって下さい」



今まで積もり積もっていた不満とか疑問を一気に白蘭様にぶつける


すると白蘭様は、またいつものような笑みを浮かべて、口を開かれた



「僕はね、名前チャン。君にはこの仕事を止めて欲しいんだ」



それは思ってもみなかった一言
まさしく解雇宣告
それと同時に滲む視界



「名前チャンにはメイドなんかよりずっと良い仕事が、他にあるんだよねー」



いよいよもって泣けて来た私


(だって、遠回しにお前にこの仕事は向いてないって言われているようなもの)



どんなに堪えようとしても、次から次に涙は溢れて来て


結局は、私のこんな所が白蘭様も嫌なのかと思ったら、次の瞬間ふわりとした感触


気付けば、私は白蘭様に引き寄せられて、しかも白蘭様は私の零れる涙を舐めあげて耳元で一言



「名前チャンは僕の所に永久就職だよ」



(驚きで涙も止まって、でも今度は顔に熱が集中する・・・なら、次はもう、解雇なんて不可ですからね白蘭様!)

(君を虐めたのは早く僕の所に来て欲しかったからと、一緒にいたかったから
今度は再就職先なんて用意しないからね)


Title
夜風にまたがるニルバーナ



END