罪って何だろう
貴方を愛した事ですか?
貴方に愛された事ですか?
でも自分の気持ちを押し殺す事も、偽る事ももう出来ないのです




好きなんかじゃ、ない
(そう言えたら、どんなにか救われたことだろう)



「名前」



そんな切なそうな顔をしないで
例えソレが演技だったとしても、胸の奥が痛いから


愛おしそうに、熱のこもった目で私を見つめる白蘭
右手は私の頬に添えられ、左手は私の服にかけられている



「逃げるの?」


白蘭はまるで、咎めるような視線を向ける


「逃げるって何から?」



必死で震える唇を動かす
(あぁ、これは愛してはいけない人を愛した私の罪ですか?)




「・・・今だって逃げてるでしょ、僕から」



もうバレてるんだから、とでも言うかのように服にかけられていた手は、鎖骨を撫で上げる



「っ、白蘭は自分が何をしてるかわかってるの?」


戸惑う私と対照的に


「わかってるつもりだよ。名前、少なくとも君よりは」


真っすぐな白蘭の瞳
そこには迷いなんか微塵もない


「だって、こんなの正気じゃない!」

「・・・正気って何?」

「だ、だって」



真剣な表情の白蘭に言葉が出てこない
ただ、視界だけがぼやけていく


白蘭なんか嫌い
私を捕えて離さないから


白蘭なんか嫌い
愛しすぎたから


白蘭なんか嫌い
愛し合ってはいけない存在だから



「名前、知ってる人間なんてもういないよ」

「・・・」

「これでも僕の物にはならないの?」



知っていた
白蘭が裏で動いていた事
私達の関係を知る者を消していた事も



「だって・・・私達は、血が繋がって!」



もしも、私が貴方の妹でなかったのならば、私は貴方を受け入れたでしょう


もしも、昔に戻れるのなら貴方を好きにならないように無駄な努力をしたでしょう



「関係ないよ、そんな物。名前は血を理由に逃げてるだけ」

「!」



図星をつかれたような気がした


本当は怖いから逃げているのだと


でも本当に怖いのは禁忌を犯す事なんかじゃない
・・・本当に怖いのはその代償に白蘭を失うのではないかという不安



「名前、君は心配することなんて何もない」



唇に白蘭の唇が何度も触れる
絶対に逃がさないように、顔の両方に手が置かれる



「名前、愛してる」



ここまで言えば、素直になるよね、と物語った白蘭の目を見て、私は白蘭の首に腕をまわして、ソレに応えた



あぁ、自分の気持ちに嘘はつけなかった
・・・違う、白蘭がそれを許さなかったんだ
好き、愛してる、そんなただ一言でこんなにも満たされた


熱を帯びて、進んでいく行為と、霞んで行く視界
最後に白蘭の熱を受け止めて、改めてもう戻れない事を実感した



(やっと手に入れた僕の半身・・・僕達の邪魔をする者がいるのなら、全てを消せば良いだけの話・・・名前、愛に理屈なんか必要ないんだよ)


Title
夜風にまたがるニルバーナ



END