猫なのか、人なのか扱い方にまだ困るけれど
繋いだ手が温かかったのは紛れも無い真実




Red String
ACT05:繋ぐ手とその温もり





「折角だし、もっと恋人同士っぽく振る舞っちゃおうか」

「は?」



女性なら誰もがうっとりするような顔で、白蘭がいきなり告げるから、一瞬言葉の意味が理解出来なかった


ポカンとしていると「どうしたの?」なんて言って、白蘭が平然と私の手に自分の手を絡ませる


(・・・こ、これって一般的に言う、こ、恋人繋ぎじゃ)


顔に全身の血液が集まって来るような感覚を感じ、間違いなく私の顔は耳まで真っ赤になっていると思う



「ん?名前、顔赤いよ?」

「な、何でもないです!(誰のせいだと・・・!)



繋がれた手を解こうと、手をブンブンと振ってみるも、白蘭の手はびくともしない


その力の強さもだけど、自分の手とは違う大きくて少し骨張った白蘭の手に、嫌でも白蘭が私とは違う"男の人"だと意識させられた



「あれ?名前、また赤くなったね・・・熱でもあるの?」

「〜〜っ!」



ふいに白蘭が立ち止まる
・・・しかも少し屈んでご丁寧に私の額に自分のソレをくっつけて


───その距離の近さに私は声にならない悲鳴を上げた



「ハハ、名前って純粋〜」



ニヤリと笑う白蘭の顔は、私をからかって遊ぶ確信犯の顔



「その調子でもっと僕で一杯になって」



その後、そう告げた白蘭の顔が補食者のソレだった事は───俯いたまま白蘭に引きずられるようにして歩く私が知るよしもなかった




◆◇◆◇◆




「んー、何買おうかな」



スーパーに着いて早速お菓子を物色する白蘭


白蘭にスーパーなんて何か結び付かない気もするけど、その整った顔付きに他のお客さんの視線が集中しているのがわかる


少しだけ優越感を覚えるも、行き掛けの白蘭の台詞を思い出した



「何でずっと手を繋いだままなんですか!」

「だからー、恋人同士っぽいことしようって言ったじゃん」

「いやいや別に恋人同士でも何でもないですよね?!」

「まぁまぁ、なんなら今すぐになっても良いけどね、名前が逸れたら困ると思ってさ」

「大丈夫です!そんな子供じゃありません!」

「でも逸れた時に僕が猫の姿になったら大変じゃない?」

「うっ、まぁ・・・でも一緒にいる時でも猫の姿になられたら困りますよ」

「そこは僕の飼い主として名前にフォローしてもらわないと」

「・・・要するに何時猫に戻るかわからないから側にいろと?」

「そういうこと・・・賢い子は好きだよ」



思い返してみても、何か上手く丸め込まれた気がするけど仕方ない


(何か少しの間に僅かばかりの耐性が出来たのかも)


「白蘭、買うの決まりました・・・・・・え?まさかそんなに沢山買うんですか?」

「ん?うん、そうだよ」



白蘭は彼には不釣り合いなカゴに、入りきれない程のお菓子を大量に詰め込み平然としている


(他の食材が埋もれてるんですけど・・・)



「重くなるからこれでも絞ってみたけど?」

「え、えっと、本当に申し訳ないんですけど、給料日前なんで、そのお金があまり・・・」



お金があまりないとは言えず、ちょっと言葉を濁すと、白蘭は一瞬キョトンとした後笑った



「僕が名前に払わせるとでも思った?」



───今日、飼い猫について新たに判った事


・手が私より大きくて温かい事

・歩く時はいつの間にか自分が車道側を歩いてくれてたり、重い荷物を持ってくれたりと、さりげなく男らしい事



(名前、機嫌良さそうに笑ってどうしたの?)

(な、何でもないです!)


END