あの日、白い人から貰った金の粉は驚くべき効果を発揮した・・・それはきっと奇跡と呼べた日々の始まり




めぐりあい
ACT2:金の粉





───ん?ここ何処?



気付いた時には、ふかふかのベッドの上で私は丸まって眠っていたようで


身体にあった無数の傷はなく、その跡さえも残っていない


周囲が少し薄暗い様子から、まだ完全には夜は明けていないようだ


見慣れない景色に現状を理解しようと、ゆっくりと身体を起こせば、目線に違和感
肉球の変わりに五本の指


(まさか・・・)


何となく嫌な予感がして、けれど現実を受け止める勇気を出せないでいると、気配を殺していたのか知らない間に、頭に黒い何かが突き付けられた



「おい・・・てめぇは何もんだ」



頭上から一度聞いたことがある低い声が降ってきて、突き付けられたモノが拳銃だと理解する



「えっと・・・」



思わず漏れた自分の声が、人間のモノだった事に驚きを隠せなかった


(何者だと言われても、今この状況で猫だと言っても信じて貰えそうにない)



「チッ、てめぇ名前は?」



中々答えない私に痺れを切らしたのか短く舌打ちをされたので小さく「名前」と返すと銃が下ろされてホッとした



「嘘はついちゃいねぇようだな」



その言葉にコクコクと首を縦に振る



「まぁ、暇潰しくれぇにはなりそうか」



そう言った黒い人は微かに笑った気がして


「これでも着とけ」



そう言って投げ付けられた黒い服からは、その人の香りがした




◆◇◆◇◆



陽が昇ると私はまた猫の姿に戻った


ただ以前と違った事は猫の姿になっても人間の言葉を話せると言うこと


私が人から猫の姿に戻る所を見ても黒い人は驚きもせず、最初からわかっていたかのように鼻で笑うだけで


それから黒い人が実はザンザスという名前で、皆からボスと呼ばれている事を知った・・・そしてその日からボスは私を自分の部屋で飼いはじめた



(何だろう・・・意外とボスって優しい?でも金の粉を私にかけたあの人は一体何者だったんだろう)


END