この先、前途多難の日々が待つであろうこの場所で
少しだけ胸が高鳴ったのは何故だろう




Suddenly
ACT2:不安と期待





「それじゃあ、行こうか」



嬉しそうに呟く白蘭先生に手を引かれて、ようやく彼の城=保健室から出られたのは散々セクハラを受けた後


でも、何だかんだ言ったって、先生に流されてしまった


白蘭先生の体温が心地良いと感じてしまった


その謎はまだまだわかりそうにないけれど



「・・・白蘭さん」



ズルズルと白蘭先生に引きずられるまま、教室に向かって歩いていると、前方から白蘭先生と同じ白衣を纏った姿が見えた



「お、正チャン」



その姿を見つけて、白蘭先生が愉快そうに目を細める



「何してるんですか、白蘭さん」



もうすぐHR始まりますよ、と呆れたように言うその人に、白蘭先生はますます口角を上げて



「んー、ちょっと名前チャンと遊んでたんだよ」

「名前チャンって・・・」



白蘭先生の言葉に、白蘭先生を捉えていたその人の視線が私に移動する



「あ、えっと本日転校して来ました名字名前です」



その視線に、思わず自己紹介をして頭を下げてしまった



「あーあー、正チャン。名前チャンが怖がってるじゃん」

「え、僕のせいですか」



白蘭先生の手が私の肩にまわされて、先生がからかうように笑う



「あ、名前チャン。これ正チャンね。一応、数学担当だよ」

「一応って何ですか!それを言うなら貴方は何処からみても教師には見えませんよ!」



(えっと、何かすっごく居づらいんですけど・・・早く教室に案内して欲しい)



「名字さん」

「は、はい」



突然、話かけられて、思わず吃る



「僕は入江正一です・・・担当は数学で、白衣なのは白蘭さんに無理矢理押し付けられたから・・・」



その際、何時も白蘭さんの面倒見るの疲れるんだよな、と影のある顔をした入江先生の姿を見てしまった


(何なの、この学校・・・もう既に幸先不安なんですが)



「じゃあ僕、次、授業入ってるんでもう行きますよ」

「うん、またね」



一気に疲れたように去って行く入江先生


そんな入江先生に、白蘭先生はひらひらと手を振っていた



そして一難去ってまた一難とは良く言ったもので、背後から別の声



「クフフ、このセクハラ保健医・・・HRはとっくに始まっていると言うのに、こんな所で何、油売っているんですか」

「あ、骸君」



不機嫌さを含んだ不思議な笑い声に思わず、声のした方に向き直る


すると、オッドアイの男性と目が合った



「クフフ・・・貴女が名字さんですか。僕は六道骸と言います。貴女のクラスの副担任で、社会担当ですよ」



よろしくお願いします、と柔らかく微笑みながら手を差し出して来た六道先生の手を握り返す


白蘭先生とはまた少し違った美形さに心臓が跳ねた



「ちょっと二人の世界の所悪いんだけどさー、骸君、僕と名前チャンの邪魔しないでくれる?」



私と六道先生の間を裂くように、不機嫌そうな白蘭先生の手が私の身体にまわされる



「おやおや、早くも嫉妬ですか?嫉妬深い男は嫌われますよ」


鼻で笑う六道先生に



「やだなー、紳士の皮を被った変態に言われたくないよ」


黒い笑みを浮かべる白蘭先生



どうもまともな学生生活が望めない気がするのは気のせいなのかな・・・


(ちょ、二人して身体に手をまわさないでくれますか?!)

(だってさ、骸君。ほら早くその汚い手を離しなよ)

(無理ですねぇ・・・という訳で貴方が離しなさい)


END