何時も余裕そうなその顔が嫌いで
何もかもを見透かしたようなその瞳が嫌いで
でも結局は───





(離れる事を赦さない)





何で私はこんな男を好きになったんだろう・・・


白蘭に呼ばれて来てみれば、私が来る事を謀ったかのように見知らぬ女の姿


白蘭の首にべったりとまわされた女の腕


これで何度目だろうか
酷い時には、今からシます的な場面もあった


既に一度や二度目ではないのは確かで、悲しいなんて感情より虚しさと怒りで心は満たされて



一瞬、合った瞳は酷く愉快そうに細められて、わざとらしく今、気付いたみたいな顔をする白蘭



「名前、遅かったね」



まるで何事もなかったかのように女の腕を振り解く白蘭に、当然ながら目の前の彼女は抗議の声を上げる


耳に響く見知らぬ女の甲高い声


そんな彼女に向けられたのは、白蘭の冷たい瞳と、「もう君は用無しだよ」の一言


おかしな事に彼女の怒りは私に向けられて、殺意の篭った眼差しを投げ付けると、荒々しく女は部屋を去った



「ん?名前、どうしたの?」

「・・・」



どうしたの、じゃない
私は一体、白蘭の何なのだろうか


恋人なんて何の意味もない肩書を持っていても、結局は私に殺意の目を向けたあの人と何も変わらない気がする



「名前」



返事をわざとしなければ無理矢理引き寄せられて、密着する互いの身体


聞いているのか、と訴える白蘭の瞳


それでも返事を返さなければ、もうそんな事、どうでも良いと言わんばかりに白蘭の手が私の身体を這う


それと同時に私は絶望を味わう事になる



結局は同じなのだ
白蘭にとっては私も彼女も


ただ、私だけが白蘭の恋人だという肩書を与えられただけで、そしてそれが彼の愛だと信じていただけ・・・


白蘭にとっては、どの女もただの性欲処理に過ぎなかったと言うのに・・・


首筋を這う白蘭の舌
素肌に直に触れようとする白蘭の手


・・・・・・もう限界
白蘭の他の女と一緒の扱いなんてされたくないのに、


彼女達に触れた手で触らないで
彼女達にも同じ事をするくせに


それが嫌なのに、白蘭に触れられると反応する自身の身体
嫌なのに漏れる声



「・・・もう、止めたい」


私の漏れた掠れた声に、顔色一つ変えない白蘭


「・・・」

「もう、白蘭の事なんて、嫌い・・・大嫌い」



こんなにも虚しいだけの関係だと、気付くには時間がかかりすぎて、


それとも気付きたくなかったせいか目を背けて、


私のやっとの思いで切り出した別れに、白蘭は笑った


何時ものように
付き合いだした頃のように
あの笑みを浮かべて


「そう、なら仕方ないね」
と一言だけ・・・



◆◇◆◇◆




やっとの思いで告げた別れを、あっさりと承諾されて二週間



「名前?」

「・・・骸」



私の数少ない男友達である骸達のアジトに入り浸りの日々


(一人でいると、余計な事まで考えてしまうから)


誰一人として嫌な顔も、深く詮索もせず、寧ろ歓迎してくれた


ただ、一人
一番、長い付き合いの骸だけは私と白蘭の関係を知っていて



「君は最近、ずっと心、此処に在らずだ」



僕じゃダメですか?、と続いた骸の言葉


頬に触れた骸の手
近付く唇


(最初から骸を好きになっていれば、こんな想いをする事もなかったのに)



「名前、僕を利用しても良いんです」



白蘭を忘れられないなら、自分を利用すれば良いと、何処までも優しい骸


(骸を受け入れたら、白蘭を忘れる事が出来るだろうか───)


ふと、頭を過ぎった自分の狡い考えに飲み込まれるように、近付く唇に、目を閉じる



「っ、」



・・・・・でも閉じた瞼の裏に浮かんだのは、骸じゃなくて白蘭の顔で、気付けば骸を拒絶していた自身の手



「・・・やっぱりですか」

「ごめ、ん」

「全く・・・次は有りませんよ」



どうしてこんなに優しい骸じゃなくて、


どうしてあんな最低な事ばかりされても白蘭しか想えないのか、この心は・・・






◆◇◆◇◆




「白蘭、」



もう入る事はないだろうと思っていた部屋には、意外とすんなりと入る事が出来て


扉を開ければ、まるで私が来る事を予期していたかのように白蘭がいた



「久しぶり」


大して驚いた様子もない白蘭


「白蘭、私可笑しいみたい・・・あんなに浮気みたいな事されて、大嫌いだって、そう思ってたのに・・・こんなにも白蘭が好きだなんて」



白蘭じゃなきゃダメだった
誰かの優しさよりも、当たり前の幸せよりも、欲しかったのは白蘭の心


白蘭の近付く足音だけがやけに耳に響く


骸の触れた箇所と同じ場所に触れる白蘭の手



「知ってる、そう仕向けたのは僕だから」



耳元で囁かれた言葉は、残酷にも甘く絡みついて離れない


塞がれた唇
唇を甘噛みされて、開ければ白蘭の舌が侵入する


力が抜けて、座り込む体制になれば、白蘭が待っていたと言わんばかりに体重をかけて私の身体を押し倒して



「白、蘭」



二週間振りの場所
二週間振りの白蘭


服の中に入る骨張った手
中を這うその手は甘い刺激を繰り返して



「や、ちょっ、」



自然と声が漏れた
下に移動する手は何時もの白蘭にしては早く



「名前、早く濡れてくれない?」



もう入れたいんだよね、と白蘭が囁いて身体の深が疼くように熱くなる


白蘭も一緒なんだって思っても良い?

白蘭も他の誰かじゃなく、私と一つになりたいんだって

もし、そうなんだとしたらこんなにも嬉しい事はないよ



「良いよ、もう来て」

「名前?」

「もう、平気だから・・・早く白蘭を感じたい」



一瞬、驚いた顔をした白蘭に笑って返事を返せば、唇に落とされた優しい口付け



入れるよ、と白蘭の言葉と共に、下腹部に圧迫感



「んぅ、あ、」



流石に久しぶりだということや、あまり濡れてない事もあり、半端ない痛みが襲う


挿入と同時に生理的に零れ落ちた雫は、白蘭の舌に吸い込まれて


私の中を動く白蘭と独特の水音



「あ、・・・ふぁ、っ、ん」



中を擦る白蘭自身
じっくりと中を味わうように、でも確実に奥へ奥へと侵入する


それが温かくて、泣きたくて




腰に触れる白蘭の手
固定されて益々、奥の壁に白蘭のモノが当たって何とも言えない快感が押し寄せる


じわじわと迫る限界と甘い夢の狭間



「白、蘭・・・私を、愛してないなら・・・それ、でも良いから、っ」



捨てないで───
そう続くはずだった言葉は白蘭の唇に塞がれて、


驚いて見開いた私の瞳は、薄く開かれた白蘭の瞳と目が合う


離れた後、二人を繋ぐかのように銀色の糸が紡いで、



「あ、・・・あぁ!」



いきなり再開された律動に、おもいっきり白蘭を締め付ける


何度もピストンを繰り返す白蘭のモノを更に締め付ければ、中に注がれる熱


整わない息の中聞こえた言葉は、ずっと欲しかった



「愛してる」


彼女が華ならば、彼女を愛しいと想うこの感情は甘く、蜜のように絡み付く


華を逃がすまいと、蜜がかけた甘い罠に、華が気付くのはもう少し後の話



(・・・嫉妬させたかっただけだったけど、少しやり過ぎちやったみたいだね)

(え?)

(何でもないよ)



END




TO:恋さん!
フリリクご協力ありがとうございました!取り敢えず二つ目のリクを!えっと、何か、間違った方向に進んでしまったような、リクを捉え間違ってしまったような・・・(泣)やたら長いですよね、すみません・・・恋さんのみ、煮るなり焼くなり苦情なりお好きにどうぞ(土下座)勿論、書き直しも承ります(笑)