何時だって私の逃げる場所は貴方で
休まる場所もまた貴方だった




魔法にかかった哲学者





本当に世の中って、いらないものが多すぎる



カリカリとシャーペンを走らせる自分と、隣で暇そうにその姿を見つめている白蘭


何となく視線が気になってしょうがない



「名前、暇なんだけどー?」



そう思っていたけど気のない素振りをしていたら、痺れを切らしたのか、白蘭にクイッと服を引っ張られた



「・・・白蘭、仕事したら?」



ヘラヘラと笑っているくせに、頭の良い白蘭にある意味嫉妬する


私だって折角、白蘭といるのに勉強なんてしたくないよ


でも、テスト期間中だし、白蘭に合わせてたら全く勉強してなかったんだ
(あぁ、私の馬鹿!)



「ヤダよ・・・名前、僕、放置プレイ大嫌いなんだけど」



笑ってるけど、不機嫌さが滲み出てる白蘭の顔


そのまま白蘭の大きな手がシャーペンを持ったままの私の手を覆う



「ちょっと、白蘭!」



勉強出来ないから離して欲しいと、手を揺らしてみても白蘭の手はびくともしない



「そんなの別にやんなくたって良いじゃん」

「いや、良くないから!」



もう後がないんだよ、って続ければ白蘭は溜め息を一つ



「しょうがないなぁ・・・名前、何がわかんないの?」

「え、」



突然、白蘭がパッと手を離す
もしかして、勉強教えてくれるとか?



「えっとね、」

「保健体育なら、僕に任せなよ」



思わず、白蘭に尋ねようとした言葉は喉に留まったまま、出てこなくなった
(なんですと?)



「いや、あの保健体育はテストな・・・「あー、子供の作り方?」



保健体育のテストなんてない、と告げようとすれば白蘭に遮られる



「そ、そんなのない!」



顔に熱が集まってるのがわかったけど、必死に抗議の声をあげた



「あー、そうなの?じゃあ受精の仕方とか?」



何なら今から実践練習しようか、とそれはそれは素敵な顔で話す白蘭
(だから何でそうなるの!)


全くもって、人の話しを聞こうとしない白蘭を恨めしげに見つめる


・・・・・・が、白蘭はわざと違う意味で捉えた



「上目遣いとか、もしかして誘ってる?」

「っ、誘ってない!」



重力に逆らえずに白蘭に押し倒される
遠くで、シャーペンがコロコロと転がって落ちる音が聞こえた



(やば、プリントが・・・テスト範囲のプリントが飛んじゃう!)


思わず手を伸ばそうとすれば


白蘭はそれが気に食わなかったのか、



「んん、」



いきなり唇を塞いで来た
強引に唇が割られて、白蘭の舌が捩込まれる


白蘭の胸を押し返そうと試みても、かえって体重をかけられて敵わない



自分の満足いくまで、私の唇を堪能した白蘭は、最後に歯列をなぞって、ようやく唇を離した



「も、白、蘭の馬鹿」



解放されて、やっと入って来た酸素を必死で吸い込みながら、白蘭に向かって悪態をつけば



「ふーん。そんな事言うのはこの口かなー?」



人差し指で私の唇を、ふにっと押さえて白蘭は再び笑う



「だって、勉、強」

「・・・心配いらないよ」



(だから、その根拠は一体何処から・・・)



「それとも名前は僕といるより、勉強したいんだ?」

「・・・っ、そんなわけない」



白蘭は狡い
そんな事言われて、私が白蘭以外を取るわけがないと知っていながら尋ねるんだから



「もう、留年したら責任取ってよね」



諦めて、白蘭の肩に両手をまわせば



「勿論」



白蘭は嬉しそうに笑った



(結局、勉強0だよ・・・)

(違う勉強は出来たけどね)

(な!)

(そんな顔しなくても、ちゃんと責任取ってあげるよ)

(本当に?)

(ホント・・・じゃあ取り敢えず式場でも見に行っとく?)


Title
夜風にまたがるニルバーナ


END