愛してるだなんて、そんな在り来りな言葉に縛られている自分
同情も優しさもいらない
欲しいのは、ただ一つの真実



Pessimista
(愛してない、愛してる)





かつて、こんなにも人を愛した事があっただろうか


一緒にいれるだけで幸せで、同じ空間に存在出来るだけで嬉しくて
心臓が煩い位に高鳴って


そんなにも想えるくらいに人を愛した事が・・・



短いようで、永い貴方と過ごした日々が、今は走馬灯のように頭の中を駆け巡る


閉じた瞼の下に映る、この部屋に来るために通い慣れた道も、もう今日で最後かと想うと今は酷く懐かしい



「いらっしゃい、名前」


何時も通り笑って迎えてくれた白蘭


「うん・・・久しぶり」



閉まるドアが重く、逃げ道が閉ざされる


今日は、別に甘い空気を、そんな感情を求めて来たんじゃない
本当は───



「白蘭、・・・本当は今日はさよならしようと思って来たの」



ドアを背に向けて、弱虫の私は何時でも逃げれるように逃げ道を作って


白蘭に別れを告げれば、


細められたその三白眼
大好きだったその三白眼



本当は、愛してる


本当は、声にならないくらいに
本当は、言葉にすらならないくらいに


愛してるの、想ってるの


声が枯れるくらいに、もしこの声が掠れて出なくなってしまったとしても、貴方が、白蘭が好きなの、って告げたいのに・・・



「もう愛してないから、」



こんな時に浮かぶのは白蘭とのまばゆい想い出ばかりで、その日々を思い返して涙が滲む


(自分から、手放そうとしているのに、馬鹿みたいだ。今更、失う事が事が怖くて怖くて)



「ねぇ、だから・・・」



終わりにしようと、告げようとすれば遮るように白蘭が腕を広げて、おいで名前、と甘く囁く


私は黙って首を横に振って、今にも零れ落ちそうな涙を堪えた


優しさならいらない
同情もいらない


なのに、どうして白蘭・・・
貴方はそんなにも「名前」って、甘く優しく私の名前を呼ぶのか



「名前」



近付く白蘭の影
逃げようとすれば、ガンッと鈍い音がして、自分の身体が痛いくらいにドアに押し付けられた



「っ、離して」

「離さない」



身長差がかなりあるのに、わざわざ白蘭は私と視線を交えるために、少しだけ屈んで、



押し付けられた右手
その痛み以外の意味で涙が零れる



「名前、僕と別れたいならどうして泣いてるの?」

「っ、な、泣いてない」



もう放っておいて
もうそっとしてて


そう思うのに、私の頬を流れる雫を拭う白蘭の手はあまりにも優しくて、振りほどく事すら敵わない


変わってない、その優しさ
出逢った頃のままだ


もう、やだ
やっぱり愛してる



「愛してない、」


それでも強情なこの口は、心とは裏腹の言葉を紡ぐ


「名前がそれでも、僕は愛してるよ」



白蘭は私の嘘なんか最初からお見通しのように笑って、私を抱きしめる腕に力を込める



すれ違いの生活に淋しさを覚えて
すれ違いの生活に別れが見えた気がして


なのに、近寄る白蘭の唇を拒否する事もできずに、塞がれた唇に暖かさを感じた


(これがもっと、冷たかったのなら、別れも可能だったんだろうか)



「白蘭、」



白蘭にしがみつくように、もう二度と離れないように腕に力を込めて



「愛してる」って白蘭に向ければ、白蘭から返される深い口付け



もっと、その唇を
もっと、その体温で包んで私に下さい


もっと愛を囁いてくれたのならば、私はこれ以上にない幸せで満たされる事でしょう


永遠なんて望まないから、今この瞬間の貴方だけはどうか私だけのモノでいて───


そう願った私の我が儘な願いは、数分後に左手を飾る光によって永遠になる



(やっぱり、私には白蘭しかいない何て今更自覚した。今なら言えるよ、貴方を愛してるって)

(愛してるだなんて、そんな一つの言葉で名前が安心を得ると言うのなら、何度だって囁いてあげるよ───僕は君が思っているよりもずっと、君を愛してるからさ)



END





TO:みーこさん!
フリリクご協力ありがとうございました!
某お方の曲をベースに、との事でしたが、如何でしょう?最後は、甘く出来ました、か、ね?(ガタブル)
すいません、最近の音楽には本当に疎いモノで、一応調べたりしてみたんですが、イメージと違うよ!って場合はもう遠慮なくおっしゃって下さい!みーこさんのみ、煮るなり焼くなり苦情なりどうぞ!勿論、書き直しも承ります(笑)