「……」
「あ、あの、」


何にも喋らない割にこっちガン見してるし、上半身は黒い肌着だけだが確かこの頭巾は昨夜会った六年生と同じ色だったからこの人も六年生なんだろうが、いやまあ最早なんでもいいから取り敢えずなんか喋ってくれ!


「お、はようございます……わたしここで働かせていただく、ハルといいます……」
「……、………」
「えっなんですか?」


恐る恐る自己紹介をしてみると、彼は口元だけ動かしたように何かを発したが聞き取れず、こちらもこの状況をどうしたらいいのかわからずで、井戸前であほみたいに向き合っていると、すっと彼がわたしに手を伸ばしてきた。


(うお、なに、)
「装束の着付けが、間違っているぞ……」


しゅるしゅると、さっきわたしが勢いで巻いた帯紐は解かれ、彼は手慣れた風に、わたしをすばやくそれらしい格好にしてくれた。端からみたら親に着付けられている七五三の雰囲気だったろうな。


「おー、こういう風に着るのか……ありがとうございます!」


強面な彼は、気にするなというようにかぶりを振って、わたしの頭に二度おおきな手の平を置くと、深緑の上着と麻縄? を持って去っていった。


「……な、なんていうか、まさに紳士!!」





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