「ところでさ、そのでかい布はなに?」 「これですか? 敷布と褌です。今から洗濯しようと」 「ふ、褌か……あっそうだ、わたしも洗濯したかったんだよ。一緒していいかな」 「え、あ、はい」
じゃあちょっと待ってて! ハルさんはそう言うと、来ていた割烹着と三角頭巾を取って長屋の方へと走った、と思ったら一旦母屋に。 少しすると、見慣れない着物を小脇に抱えてハルさんは戻ってきた。
「へへ、おばちゃんにお願いして休憩もらっちゃった」 「手伝い抜けても大丈夫すか? あれだったらオレやっときますよ?」 「いいよーきり丸お駄賃ねだるもん」
なんてね、ははは。 早く洗濯しちゃおう! 日が傾いちゃう前にさ! と、ハルさんは軽やかに笑って言う。
… … …
「――で、あんまり力入れすぎると生地が痛むので、程よく力を入れて擦って下さい」 「おお……石でやるんだね……」 「そっすよ。初めて知りましたか?」 「うん、びっくりだ」
井戸の近くにて、オレの洗濯ぶりを横でしげしげと眺めると、しゅるりと腕まくりをしてハルさんも同じように自分の着物を洗濯し始めた。 横目で見ていると、見たことのない変な着物を一生懸命洗っている。なんだろうか。
「ハルさん、それ、なんすか?」 「えっこれ!? えーっと、そうだな………」
何やらもごもごと、あーとかえーとか言っている。答えにくいものなのかな。
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