「触らないで、ください」
忍足くんの綺麗な指が近づいてきて、あたしはそれを思わず避けた。
「なんで?」
「あたしは、忍足くんに似合わないんです」
嗚呼嗚呼、恐れ多い。
あたしなんか忍足くんの側にいるコトすら似合わないというのに。
「なんでそんなコト思うん?」
「あ、あたしは可愛くないし、綺麗でもないし」
忍足くんとあたしは違いすぎるのだ。
あたしなんかピンライトすら要らないような存在だ。
ずんずん沈んでいく気持ち。
いいのだ、これでいいんだ。
あたしが自意識過剰になんかならないように。
「苗字、こっち見て?」
「…!」
頭の上から声が降ってきた。
嗚呼、逆らえるはずがない。
だって何故なら、
「俺は苗字を可愛いし、綺麗やと思っとる」
忍足くんはあたしの絶対だから。
忍足くんはあたしの
「それじやダメ?」
神様なのだ。
神様の言うとおり。
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