「ゲームをしようじゃないか、忍足くん」
「なんや、唐突に」

どどん、と目の前に仁王立ちになる##西崎は、クラスメイトの視線を集めすぎる。
そうや、俺たちはお互いに周りの視線を集めすぎる。
だから、こんなに厄介なんや。
俺が西崎に好きと何回言っても、西崎が俺に何回好きと言っても、俺たちは互いにそれを信じるなんてしないんや。
それが嘘だった時が怖いから。
所詮弱虫でしかない。
もしかしたら追いかけるのが好きなのかもしれない?
いや、そんな甘い感情は相当昔に消え去った。
こうしてお互いが好きと言い出してから、もう2年半なのだから。

「忍足くんがそんなに逃げるからいけないのだよ」
「俺は逃げてなんかない。逃げとるのは、西崎の方やろ?」

俺は逃げてなんかない。俺の答えを流すのはいつも西崎。
逃げてるのは西崎の方や。

「いいや、違うな。それよりも、ゲームするのか?しないのか?」
「えぇで。乗ったる」
「ルールは簡単。一週間のうちにあたしに好きだと言わなければ、忍足くんの勝ち。あたしに好きだと言った瞬間に、」

負ける気なんてしないと思っとった。
負ける気なんてなかった。
「あたしの勝ちだ」
「おい、それって」

いや、このルールが可笑しいのはよく分かる。
利己的な西崎が仕組んだゲーム。
西崎が勝てば、必ず西崎の利益となる。
さらに言えば、西崎が仕組むゲームは、相手が負けたとしても必ず西崎の利益となる。

「二言は許さない。さぁ、スタートだ」

ただただ俺の意見を無視してるんじゃない。
そうか、分かった。
そんなに言うなら、

「勝つのはあたしだ」

西崎の言葉を信じてやろうか。


32秒後の意地悪な「愛してる」



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