「ご、めんなさい」
「なんで、じゃ」
俺たちは思い合っとる。
そう信じてやまなかった。
なのに、目の前には下を向いてごめんって言う波野。
「好き、好きだよ。仁王くんのコトは好き。だけど、」
「…他に、好きなヤツおる、んじゃな?」
嗚呼、俺の勘違い。
そう実感する。
これは俺の勘違いじゃ。
「はっきり答えていいぜよ」
「違うっ、違うの!」
苦しい、失恋するってこう言うコトなんじゃな。
でも、俺には波野を忘れるなんて出来ん。
「波野を思っててもえぇ?」
「…い、いいの?」
涙に濡れたその頬を親指で拭ってやる。
「俺の好きなようにするだけじゃから、な?」
「ありが、とう。ありがとう、仁王くん、」
「大好きだよ」
嗚呼、これだから俺は逃げられない。
にやりと笑う。
(続きます)
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