「わわっ、ちょっ、ひゃっ!」
「黙っとれ」

ふらふらしてるあたしたちの自転車を迷惑そうに見る人もいれば、眩しそうに見る人もいた。
ただ、そんな視線に気づけたのも乗り始めだけであって、すぐにバランスを取るのに必死になってそんな視線なんて全く無視。
全体的に細い仁王が漕いでいるのだ、そりゃあバランスが悪い。
むしろ仁王は1人だってふらふらしながら走行してるって言うのに。

「じゃああたしが黙ってられるように漕いでよ」
「…」
「仁王が黙ってどうするの」

あたしが黙る代わりに黙り込んだ仁王の背中に顔を埋めた。
こうすれば声が小さくなるだろう。



自転車にしては中々遅いながらもあたしの家に到着。(ちなみに独り暮らしである。高校から独り暮らしなんてと思われても仕方ないが、事実。)
歩くよりか身体的には楽だが、精神的に疲れたよマサハルくん。

「なんでいきなり2ケツなんてしようと思ったの」
「…」

当然のようにソファに座っている仁王に聞くと何故か沈黙。

「仁王?」
「波野が、バイクで2ケツしてもらいたいって話とったから…」

覗き込むようにもう一度話かけるとぼそぼそと呟くような声。
バイクで2ケツ…、あぁ確かにそんな話を友達としてたっけ。
どんなところにきゅんとなるか、とかそんな話だったと思う。
なんだ、聞いてたのか。
てっきり寝てるもんだと思って、妄想の末の産物を口にしたあの時の自分が恥ずかしい。
ちょっと前の自分を思い出していたら、きゅっと手が握られた。
その光景は完全に主人の様子を窺うペット。

「ちゃんと大型の免許も取る。免許取ったらすぐ後ろ乗せる。じゃから、」
「大丈夫、嫌いになったりなんかしないよ」

思わず苦笑しながら、仁王のセリフを取った。
いくら目の前に大型バイクを乗り回すイケメンがいたとしても、仁王が好きってコトに変わりはないよ。

「波野、愛しとおっ!」

それだけあたしが言うと、仁王は見えない尻尾を振りながら抱き付いてきた。
しかし、自転車すらまともに乗れない仁王がバイクの免許なんて取れるのかしら。


未来計画追加(「ちなみにバイクの2人乗りは免許取って1年間は駄目だからね」「え、そうなん?!」)




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