「レーザービーッ、」
「ファーーーッ!」
コートに響き渡ったのは、柳生の声と、あたしの声と、ボールが間抜けにコートに落ちる音。
沈黙は、恐ろしく重い。
いやいや、どうしたのよみんな。
さっきまでの活気はどこに。
そして、どうしたのよ、
「波野さん、貴方は殺されたいんですかえぇ?」
柳生さん。
あたしの頭を鷲付かんでどうなさるおつもりで…?
えぇとえぇと、あたし何かしましたかね?
今はデッカイ虫が目の前を飛んでて、わたわたして醜態を晒してただけなんだけど。
え、え?
ちょ、ちょっと柳生さん。手にめちゃくちゃ力が入っていませんかぁっ?!
「にぎゃぁあっ。や、やだなぁ柳生。あたしがそんなマゾヒストな訳ないじゃないー、あははっ」
バタバタと暴れると柳生の手が離れたから逃走。
一体、どうしたっていうんだ!
あ、ドリンク作らなきゃ。
あと1つ、
「のぉ、波野」
「に゛ゃっ、仁王…?」
思わずボトルを落としそうになったじゃないか…!
振り返って仁王に文句を言おうとした、したんだけど。
「お前さん、相当マゾなんじゃなぁ?」
「ど、どういうコトでしょうか?」
なんで仁王の方が明らかに怒ってるの…?
柳生は頭を真上から鷲掴みだったけど、仁王は額から鷲掴みだ。
いや、こんな解説をしてる場合じゃない。
「俺のロッカーをアロンアルファで固めるなんて、お前さん自殺願望があるんじゃなぁ?」
アロンアルファ?
確かに部室で技術の宿題してたけど、アロンアルファ使ってたけど、仁王のロッカーを固めたりなんかしてないよ!
きっと仁王は誤解してるんだ。
「い、いやそれはね…!」
「言い訳なら、あの世でたぁーっぷり聞いちゃるよ」
「っ?!」
はい、仁王さん。
怒ってます?怒ってますよね?
その綺麗な顔に青筋が立ってらっしゃいますよ。
手にも力が…、痛い痛い痛い痛い!
またバタバタと暴れると仁王の手も離れたから、近くにいた丸井の所に駆けていった。
「丸井、助けて!」
「よーやく来たな、こんの泥棒猫!」
「はい?!」
丸井の背中にくっついて仁王から逃げようと思ったのに何故か丸井に捕まっていた。
え、え、なんでどうして。
「俺の菓子全部食いやがって…!今回ばかりは許さねぇ!」
「ひぃっ!」
「いっつもお前が隠すトコになかっただろぃ!俺の菓子返せぇ!」
ち、違う!食べてないよ!
隠し場所を変えただけだよっ。
丸井から逃げようとして走りだしたらなんでか丸井も追ってきた。
いやぁあ!
プレイヤーとマネージャーじゃ体力が違うじゃないか。
くぅ、もう足が限界…っ。
突然、ぐいっと腕を引かれた。今までいた道を見れば丸井が先に走っていく。
よかった助かった…!
見ると、なぁんだ赤也じゃないか。
偉いよ偉い、ん?
なんか様子が違うような…。
「波野先輩!ひどいっすよぉ!」
「え、赤也どうしたの?」
なんで泣いてるの?!どうしたのっ?
「なんで俺のドリンクのボトルに塩入ってんすか!」
「えぇ?!」
ドリンク?
まだあたし渡しに行ってない。
もしかして、
「仁王先輩が波野先輩が作ったって言ってたっすよ!」
仁王ー!
濡れ衣の濡れ衣だ。
違うあたしはやってないのに!
とりあえずその場と赤也から逃げ出した。
後ろから波野せんぱぁあいっていう泣き声が聞こえたけど、生憎あたしのせいじゃないんだもの!
ふぅ、疲れた…。
一休みしてもいいかな…。
「西崎!」
「さ、真田?!」
座ろうとした瞬間にいきなり真田に呼ばれて思わず直立。
なに、今度は一体どうしたの。
「部室が恐ろしく汚いが、あれは一体何事だ!さっさとマネージャー業をせんかぁあっ!」
「りょ、了解しましたぁあっ!」
うわぁあん!
それは丸井のせいなのにぃい!
部室はホントに酷い状態だった。
丸井のヤツ…!許さないんだからね。
何を倒したのか、床が変に濡れてるし、もしかしてこれは赤也か?
とにかく拭かなきゃ。
四つん這いになって床を拭く。
全く、机の真下なんかにどうやって零すんだ。
拭き残しがないようにしないと、ガッと机の足に手がぶつかって何かがあたしの背中に落っこちてきた。痛い!
しかも重いし、何か水みたいなものが染みてくる。
なんだよこれ。
生憎、背中に落ちたものを片手で取れる器用さは持ち合わせてない。
背中を傾けて落としちゃおうかな。
うん?背中の上から何か落ちてきた。
ピンクの、花びら…?
「っ?!」
やばいやばいよやばい!
これはもしかしなくても幸村の大事なお花様では?!(「因みに今回のは一番のお気に入りなんだ」)
これを落としたら、あたしどうなっちゃうの。
とりあえず、慎重に慎重に…。
あ、
がちゃ、
ごろん、
「波野、一体何をやってるのかな?」
「にぎゃぁぁああっ!」
虹色な僕ら(「勘違いして悪かったって。ガムやるから」「許してください」「ぷりっ」「す、すまぬ」「先輩ごめんなさいーっ」「だから、もう泣くなよ」「ふぇっ、ぐすっ、」「みんなもこう謝ってるコトだし許してくれよ、な?」「マネージャーの行動が全て無意識だった確率100パーセント」)
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