彼氏にフられた。
彼が好きだったのに、ずっと一緒にいれるって思ってたのに。
家に帰れる状態なんかじゃなくて、思わず教室で号泣。
辛い、辛いよ。

「馬鹿、なんじゃな」
「うるさ、い」

こんな空気の読めない言葉を掛けるヤツなんて1人しかいない。
顔を上げたくもないし、頭の上に手を置かれて上げられないから、ヤツの顔は見ない。
また忘れ物かこの野郎、タイミングが良すぎるんだよ。

「だから、あんなヤツ止めろって言ったじゃろ?」
「だって、彼が王子様だと思ったんだもの」

ばさっと突っ伏した顔の前に落とされたタオルを腕の隙間から引っ張り込む。
仁王の家の柔軟剤は相変わらず良い匂いがする。

「王子様?はっ、じゃあ波野はお姫様か」
「…あたしの夢、馬鹿にしないでよ」

昔から言ってるじゃないか、あたしの夢。
御伽噺のお姫様みたいになりたいんだ。
シンデレラとか白雪姫みたいな辛い生活は嫌だけど、絶対に王子様が見つけてくれる。
愛してくれる。
最高じゃないか。

「おーおーすまんのぉ、」
「お姫様みたいに愛されて、暮らしたい」

小さい頃からあたしの夢が揺らいだコトなんてない。
ずっとずっとお姫様に憧れてたんだ。

「なぁ、お姫様ってのはいつも最後は幸せじゃろ?」
「そうだよ、お姫様はいつだって幸せなラストなんだよ」
「幸せであるべきだって言うんなら、俺が最後まで幸せにしちゃるよ」

訳が分からない仁王のセリフに思わず顔を上げる。
そう言って仁王はそっとキスをした。


お姫様が目覚めました。(色んなコトにね。)




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