女の子とデート中。
人の波に呑まれながら歩く。
隣でベタベタしてくるその女の子は、ぶっちゃけうざい。
あーあ、早く「その瞬間」が来ればえぇのに。
あ、

「ゆ、うし…?」
「なんや?波野」

そうや、俺はこの瞬間を待ってたんや。
柄になく胸が高鳴る。

「侑士ぃ、だぁれ?」

隣の女の甘ったるい声、

「ん、俺の彼女」

心の中で笑う俺。
でも波野は表情が固まりついたようにそのままだった。
サイッテーなんて言われて、波野と2人っきり。

「家まで送ってくで」

さぁ、俺に縋ればいい。



「侑士、あたしのコト、好き?」

握った手を揺らしながら歩く。
波野の口から出た言葉に心が浮き立つ。
今日、今日こそは。

「愛しとるよ」
「そっか」

あっさり打ち砕かれた俺の野望。
嗚呼、いつになったら波野は嫉妬してくれる?
いつもと違う切り口に期待をしたのが甘かったか。

「なんかあるんか」
「ううん、いいの。侑士があたしを愛してくれてるならそれでいい」

本当に彼女は俺を愛してくれているのだろうか。
俺ばっかりが好きだって、空回ってる気がするんや。
少なからず俺だって傷ついてる。

「俺が浮気してても?」
「うん、侑士はあたしに嘘だけはつかないから」

そして俺は、波野をまた傷つける。
傷つけながら傷ついた。

「それでえぇの?」
「うん、それでいい」

俺たちはきっと永遠に、


互いに傷つけあう。




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