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この世の中には、明確な理由もなく犯罪を犯す者がいる。
人を刺せば殺人だし、毒を公衆にばら撒けばテロリストだが、そんな殺意すらない犯罪者がいる。
例えば嘘の殺人予告。例えば電子掲示板での嫌がらせ。日頃のストレスを原因に、ただ注目されたいために実行する。
そうして世間が怖れ慌てふためく様子を見て楽しむ者のことを、大きくまとめて“愉快犯”と呼ぶ。


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土砂降りの夕方に出会った二人は、この“愉快犯”という単語を同時に思い浮かべていた。
出会ったと言っても一方的なもので、片方がもう片方を見付けただけなのだが。
一人は少年。学生らしい彼はこの雨ざらしの中、傷だらけ血だらけでボロ雑巾のようになって倒れている。
一人は女性。蛇の目傘に袴と大正を思わせる出で立ちでありながら、ニット帽にボストンバッグというちぐはぐな取り合わせである。

少年は考えていた。最初は只の“愉快犯”だと思っていたのに、と。
つい最近まで少年は数人の友人に囲まれ、穏やかとは言い難いが楽しい日常を過ごしていた筈だった。
それが一人の転校生が切欠で全て失うことになるなんて、誰が予想できただろう。
友人に裏切られ、教師に見捨てられ、家族からも切り離され、彼は行き場を失っていた。
そればかりか度重なる暴力と栄養失調が、彼の生命力さえも奪っていく。
あの転校生は自分を陥れて楽しむ“愉快犯”じゃない、最早殺人犯だ。
何とか自分の汚名を晴らしたい、あの日常に帰りたい。
自分の無力さを思い知り、涙が止めどなく溢れては雨と共にアスファルトに流れた。

女性は考えていた。これは“愉快犯”の研究になるんじゃないか、と。
とある会社に勤める彼女は、ある課題を上司から課せられ出張でこの町に来ていた。
曰く「犯罪者の心理について研究すること」
さてどうしたものかと考えながら地図を頼りに社宅に向かっていたところでその少年を見付けた。
尋常じゃない少年の有り様に、これは只事ではないと思っていた。
いじめか家庭内暴力か、またはその両方か。少なくともこの少年は早急な手当てが必要だろう。
そこで彼女の脳裏に先程の考えと共に、ある計画が思い浮かんだ。
――彼が起きるまで介抱し、もし彼の事情が予想通りならば、私が“愉快犯”になろう。
意識が混濁しているその少年を片腕で軽々背負い、女性は雨の中に消えた。


この日少年――沢田綱吉が、並盛町から消息を絶った。



   *  *

という前置きで始まる、ツナ嫌われ連載。

【ネタバレ含む大筋】
前置きの女性夢主は地獄の獄卒。プロファイリングを勉強中。
上司である鬼灯に犯罪心理について資料を作るよう言い渡され、研究に専念するために溜まった有給を使って現世にやって来る。

同タイミングの並盛では、ツナが転校生の策によって陥れられていた。
ボンゴレファミリーボスの座を奪うため、転校生はツナを嵌めて獄寺達やリボーンを手中に収める。
母親に助けを求めようとするもリボーンにより家に帰ることを許されず、毎日暴力を浴びせられる。
ある日隙を突いて逃げ出して倒れていた所を夢主に拾われる。

もしツナの受けた被害がいじめかDVなら、匿いながら加害者を観察しついでにそれを楽しむ自分の心理も分析しようと思い、ツナを介抱する。
ところが聞いてみればマフィア云々の話が出てきて、想像以上にツナの身が危険だと感じた夢主は計画を変更。
衣食住を与える代わりに家から出ることを禁じ、事実上ツナを軟禁状態にする。
夢主はツナに自分の名前も素性も教えず、鬼の角を隠すために家ではずっとニット帽を被ったまま。
そんな夢主にツナは始めは怯えていたものの、外出を許さない以外は優しい夢主を徐々に信用するようになる。
暫くすると拘束具もなくなり、夢主がツナに勉強や護身術を教えたりと妙な師弟関係を築き始める。
リボーン達がツナの失踪に気付いた辺りで黒曜編スタート。
京子達の身を案じたツナが初めて家から逃げ出し、それを夢主が追う形で二人は町に出る。

後はなんやかんやでツナが骸に勝って、なんやかんやで修行してザンザスに勝って、なんやかんやで未来に行って白蘭に勝つ。
リボーン達と対立しては隠れ対立しては隠れを繰り返す、そんな話。
最終的にリボーン達と和解してもいいし、そのままボンゴレ潰してもどっちでもいい。

「綱吉、それはストックホルム症候群ってやつですよ」
「誰が何と言おうと俺の家庭教師は貴女です、愉快犯さん」


【夢主設定】
名前:鼓
地獄庁で働く医師。袴にブーツ姿で、地獄では上から白衣を羽織る。
二本の黒い角は現世では猫耳ニット帽で隠している。蒲公英の柄の傘を持ち歩く。
薬学を通じて鬼灯と顔見知りになる。薬だけでなく外科・内科・産婦人科にも精通していて、カウンセリングもやりたいと思っている。
現世での名前は獅子牙(シシガ)。
基本的に誰にでも敬語で話す。大人しく温厚な性格だが、鬼灯の影響で時々突拍子のない行動に出る事もある。
医師なので呵責業務はないが、キレるとどこからともなく金棒をチラつかせる。


というちょっと無理矢理な設定。
嫌われ・犯罪クサいお話を書いてみたかっただけ。
恋愛要素どころか鬼徹のキャラは名前しか出さないから、鬼徹知らなくても読めるかもしれない。

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