白雪 U | ナノ
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序幕


それは昼の出来事。

「わーーーっ!!」
「ホームランです!!」

秋晴れの空に、白い球が大きく放物線を描く。その球が客席に吸い込まれると、周囲が歓声に包まれた。
その歓声が向けられているのは、ダイヤモンドを軽快に走る並盛中学のスター・山本武である。

「流石山本!すごすぎ!!」
「ふむ、先日の怪我などなかった事のようだな」

そして彼の応援に来ていた綱吉達も、客席でメガホン片手に歓声を上げていた。
つい先日まで並盛の街を騒がせていた黒耀中学の生徒との喧嘩で山本は腕を負傷したが、無事に傷口が塞がり本調子で試合に挑むことができている。
……本当はその影に裏社会の指名手配犯が潜んでいたのだが、それは知らなくていい事だ。

「ったく、山本ごときに相手チームは何やってんスかねぇ…てめーらしっかりやんねーと暴動起こすぞゴラ!!」
「獄寺君何しにきたのォォ!?」
「一体山本の何がそんなに気に食わないんだ」
「まあ落ち着け、スポーツ観戦では他にやることがあるだろう…野球など辞めてボクシングやらんかぁぁああ!!」
「それも間違いぃぃいい!!」

ダイナマイト片手にブーイングする獄寺に、TPOに構わずボクシング部に勧誘する了平。綱吉の隣で溜め息を吐く京都。
彼らも先日の一件で負傷したのだが、今ではすっかり元気になり元のハチャメチャっぷりを披露している。

「バカやってんじゃねーぞ芝生頭が!!」
「甘いぞタコヘッド!!バカはバカでもボクシングバカだ!!」
「止めろ莫迦二人、試合妨害だ」
「(ってか馬鹿認めていいんですか!?)」

その後も、お弁当を持ってきたビアンキを見た獄寺が気絶したり。
イーピンをからかってはしゃぐランボに京都が拳骨を落としたり。
何時もと変わらない騒がしい風景に呆れつつ、綱吉はそっと安堵する。
ああ、日常が帰って来た、と……

――そして、感じた悪寒をなかったことにした。


「――また…いずれ…」


   *  *


それは夜の出来事。

「ゔお゙ぉい!てめぇ何で日本に来たぁ」

静けさに包まれた街に、響く金属音。
銀髪の男と金髪の少年が武器を交わらせ、ビルを飛び移っていた。

「ゲロっちまわねぇと三枚に卸すぞぉ!答えろオラァ!」
「答える必要はない!」

ダミ声の男に凄まれても、少年は怯むことなく攻撃を仕掛ける。
だが男に弾き飛ばされビルの屋上から投げ出された彼は、寸でのところでビルに捕まった。
宙ぶらりんの彼の懐から一枚の写真が落ち、慌ててそれを掴んだ。
そんな少年を男は見下ろす。背後の月明かりで顔はよく見えないが、眼だけが怪しく光っている。

「ゔお゙ぉい、弱ぇぞ」
「(っ…こんなところで、やられるわけには…!)」


その写真に映っていたのは、母親に抱き上げられた蜂蜜色の髪の子供…――

その振り上げられた腕でシャラリと鳴った、銀色のブレスレット…――



戦場の白雪

(それは、嵐の前の静けさ)

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