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お花見


「今日あたり満開だな、いい花見になりそーじゃねーか」
「まだ早朝ですし、最高の場所をゲットできますよ!」
「う…うん」
「朝から元気だな、お前達…」



お花見



京都が並盛にやって来て1週間程経った。季節は春。
この日綱吉達は並盛の公園で花見をすることになっていた。
場所取りで殺人を起こしかけたビアンキを阻止するべく半ば強制的に綱吉が場所取りに駆り出されたのだ。
その助っ人に獄寺・山本・京都が抜擢され、早朝の肌寒い中公園へと向かっている。

「お!」

不意に山本が声を上げ、他の三人も彼の視線の先を追う。
其処には見事なまでの桜並木が広がっていた。まだ誰も来ていない。

「おー、ラッキー!」
「ふむ、見事な景色だな」
「これで殺されなくてすんだ〜」
「一番乗りだ!」

これならビアンキも文句は言うまい。綱吉が安堵の息を漏らしたその時、後ろから声が掛かった。

「ここは立ち入り禁止だ」
「!?」
「この桜並木一帯の花見場所は全て占領済みだ、出てけ」
「ああ?」

リーゼントに学ランという一時代昔の不良の格好をした男がこちらを睨んで立っている。
怯える綱吉の隣で京都は、確か新八の友人もあんな頭だったな…と思いながら眺めていた。

「おいおい、そりゃズリーぜ。私有地じゃねーんだしさー」
「誰も話し合おうなんて言っちゃいねーんだよ。出てかねーとしばくぞ」

バキボキと指を鳴らして脅しにかかる男に悲鳴を上げる綱吉。
男が本当に手を上げるつもりなら、と京都は組んでいた腕を解いたがその必要は無かった。

「るせ」
「はがっ!」
「獄寺君!(あちゃー)」
「ケッ」

短気な獄寺が男に膝蹴りをかましたのだ。余程強かったらしく、男は一撃で倒れた。
慌てる綱吉に対し、京都は呆れた様にそれを見ていた。先に手を出したら正当防衛にならないではないか。

「全く、喧嘩っ早い奴め…」
「何やら騒がしいと思えば君達か」
「「「「!」」」」

今度は先程よりも落ち着いた声が聞こえてきた。
振り向くと、自分達と同じくらいの年頃の少年が桜の木に凭れて立っている。
黒髪、少し吊り上がった眼、肩に羽織った学ラン。その袖には「風紀」の刺繍が入った腕章がピンで留められている。
周りとは違った雰囲気を纏うその少年は、好奇の目で此方を見ていた。

雲雀恭弥、初登場である。

「雲雀さん!!」
「?ひばり…?」
「そっか、京都は雲雀に会うの初めてだっけ?」
「知らんな。風紀委員会の者のようだが…」
「ああ、委員長なんだと」
「ただの風紀委員じゃねーぞ。この並盛町一帯の頂点に立つ最強の不良だぞ。そしてツナのファミリー候補の一人だ」
「何勝手な事言ってんの!?ってかこの人、風紀委員だったんだ!」

倒れた男をよく見ると、雲雀と同じ風紀委員会の腕章を腕にしている。
とんでもない人を敵に回してしまったと、綱吉は再び焦り始めた。

「僕は、群れる人間を見ずに桜を楽しみたいからね。彼に追い払って貰っていたんだ」
「横暴にも程があるだろう、ソレは…」
「ところでさっきから気になってたんだけど、其処の着流しの君は誰?初めて見る顔だね」

綱吉達の方を見ていた雲雀の目が京都に向けられた。男物の着流しに帯刀という彼女の姿は異様に見えるのだろう。
ジトリと見詰めるその目付きは、さながら獲物を狙う肉食獣である。
また新しいタイプの人間だなと思いながら、自己紹介くらいはしておこうと体の正面を彼に向けた。

「最近此処に越して来た山本京都だ。この春から並盛中学に通う事になっている」
「へぇ…君が赤ん坊の言っていた…」
「(り、リボーン!雲雀さんにも話したのかよ!)」
「それにしても嬉しいよ、かの有名な真選組新参謀と対面できるなんてね」
「「お前も読者か」」

京都と獄寺のツッコミが同時に決まる。衝撃的な事実の発覚に、綱吉は自分の耳を疑った。

「(ウッソォォオオ!雲雀さんが銀魂を!?似合わなさ過ぎるーーー!!)」
「ハハッ!雲雀も読者だったんか、俺もだぜ!雲雀は誰ファンなんだ?」
「気安く話し掛けないでくれる?あと僕は誰のファンでもないよ。咬み殺したい人はいるけどね」
「(どんな事考えながら漫画読んでやがんだコイツ!)」
「一番は主人公の銀髪だけど、君も面白そうだね。咬み殺させてよ」

―ガキィイイイン!!

綱吉達三人は、一瞬何が起こったのか分からなかった。
気が付くと鋭い金属音が鳴り響き、雲雀と京都が向かい合って立っていた。
二人の間でトンファーと刀がギチギチと音を立てている。どうやら音源はそれらしい。
二人は暫く黙って睨み合っていたが、直ぐに間合いを取り、再びぶつかり合った。

「ふむ、いい身のこなしだな。動きに無駄がない」
「君もね。でもその上から目線は気に食わないな」
「お前と似たような歳の筈だ。今年で14になる」
「僕の方が年上だよ」
「…精神年齢は二十歳のつもりだ」
「(無理ありすぎ!!)」

再び間合いを取り、その場に膠着状態が広がる。
その時、場に不釣り合いな陽気な声が聞こえた。それは京都も聞き慣れた仔牛とは違う声だっだ。

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