唐突

「好きだ。」

なんだ急に

それはポンっと何もない空間に投げ出されたような唐突な告白だった。
今いるここの部屋にはオレとこの部屋の主であるウルフしかいない。ウルフが告白した相手は必然的にオレである。いや本当なんだよ急に
オレらが付き合い初めてもう何ヶ月か経っている、その告白は今更すぎて逆にシラけさせる言葉だった

「なんだよ急に」
「いや、告白してねーと思って」
「今更だろ」

少し呆れて雑誌を床に捨てゴロンとソファーに寝そべり欠伸一つ出して眠いと無意識に呟く。相変わらずウルフはベットの上に座っているだけだ。ソファーの背もたれで姿は見えないが多分視線はこちらに向いていると思う。なんとなく感じる
ウルフとこの関係になったのはスムーズだった。
最初の頃は凄く喧嘩して、他の奴にも迷惑甚だしく騒ぎまくったがいつの間にか何気無く一緒にいて、何気無く話して。そしてポロリと付き合うか?と口から出ておう、でお付き合い完了よ
いやいやまてまてと誰かが見たらツッコむかもしれねーが、何故か知らんがお互い嫌とは言わなかった。冗談だの男同士だのそんな思想が何もなくピースが型にハマったようにすんなりだ
正直この関係は自分も嫌じゃなかった。居心地の良さも感じたし、喧嘩ばかりしてたせいか相手の思考や今こんな事考えてそうなんて理解出来るようになってきた
向こうも多分同じだと思う。
うとうとして来た時ソファーの背もたれに手を置かれギ、と音がし視線を向ける
思ったより近くにいて、どきりとしつつ悟られぬよう口を開いた
「なんだよ」
「俺ら、付き合ってんだよな?」
「まぁ、そうだな」
「これじゃ付き合ってるって言わなくねぇか?」
「…こういうカップルがいても、別にいいだろう」
「いーや全く友情とかわんねーな」

ウルフの目が耐えきれなくなって目線を逸らす

「なんで付き合うかなんて言ったんだ」
「…なんで、お前も了解したの」
「テメーが好きだからだ、ファルコ」

普段言わねーくせに。
名前で呼びやがってふざけんじゃねぇぞ!
その場が嫌で、立ち上がりソファーから逃げようとしたが腕を掴まれ引き戻された。ウルフもいつの間にかソファーに座っていた
ガッと顎を掴まれそのまま顔を無理やり寄せられたために膝が床につく。

「おーおー真っ赤っかだな、そういう素直なところもスゲー好きだぜ」
「うっうるせぇ!黙れ!」
「なぁ、言えよ理由。なんでそんなこと言ったんだよ。」
「ッここまでで分かるだろ!察しろ」
「いやー?わかんねぇな、口で言わねぇとわかんねぇ」

ニヤついた顔でとぼけやがって、分かってるくせに本当にムカつく野郎だ。
目線を逸らして黙っていると声を抑えてクックッと笑い声が聞こえた。さっきまで好きと言われても平常心保てたのに、今じゃすっかり駄目で。あぁ、喧嘩じゃ負けねぇのにななんてポツリと思う。

「…ウルフ」
「なんだ?」
「オレも、す…きだ…」

最後は消え入りそうな声だったが聞こえたらしく。少しビックリした後優しく笑いかけた

「…こんなお前の姿見れるならもっと早めに言えば良かった」
「…くたばれ」

これが最初のキスだった。



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