嫌な三角関係

今日はご主人の機嫌が良くたまには外でゆっくりしたいだろうと俺達を外へ出してくれた
確かに戦いばっかな日々で身も心も疲れていた、かといっていきなりの外の世界に出されたってなにもすることがない
とりあえず木陰にねっころがってみた

木々の隙間から太陽が漏れているが気にはならないし時より吹く風がなんとも気持ちいい、頭の近くにある花が揺れる
あぁ…平和ってこういうことを言うんだな
リザードンがうとうととしているとバサリと風に乗って雑誌のような物が顔に当たった
ビックリしてしばらく硬直したあと、恐る恐るその雑誌を見てみる
なんとそれはアダルト雑誌だった。

おおなんと運が良い このモデルの胸のたるみ具合なんて最高じゃないか たまにある休日にこんな良いご褒美をくれるなんて神様も捨てたもんじゃないな

ゴロリと俯せになってページをパラパラとめくる、すると雑誌の上の方を見ると誰かが自分の目の前に立って居ることが分かった
誰だと思い上を向くと、普段一緒に戦い友情を深め合うゼニガメがそこに立っていた
リザードンは驚きのあまりバッと急いで座り雑誌を背に隠す

「や、やぁ、ゼニガメくん、いつからそこにいたんだい?」

焦りすぎて普段の口調とは全く違う口ぶりで話す、それはどっからどうみても不自然だった

「…リザードンが…隠した雑誌を見てたところから」
「そ、そうか〜…」

ヤバい、ゼニガメはまだ純粋無垢な幼い子供だ性別は分からないが男でも女でも確実にヤバいだろう
それにゼニガメはあのフシギソウが大切に接する唯一の子供
此処で変な事を教えれば間違いなく嫌われる、否殺される…!
それだけはなんとか避けたい

「隠したのアダルト雑誌だよね?そういうの好きなの?恥ずかしくないの?」

きょとんとした顔で喋り出す。

バレてる!?しまった、くそっ言い訳が凄くしにくい…!下手な事を言えば失敗するなにかないかなにか…とりあえず返答をしなければ、無視されたとかなんとか言われたら敵わん、答えにくい質問しやがって

「いや…まぁ、どちらかと言えば好きの方で、恥ずかしいと言う点では少しおかしい」
「どういうこと?」
「男性はこのような本を恥ずかしいと言う概念でみるもんじゃない、普段普通に読んでいる漫画やゲームと一緒のような感じで嗜むのだ。お前は漫画を読む事を恥ずかしいと思うか?思わないだろ?」

得意げに雑誌を見せながら二三回指でトントンと叩くとゼニガメを見つめる
ゼニガメはふぅんとリザードンを見つめた

我ながら今凄く良い事を言った、これは明言として語り告げられるべきだ 俺は男を代表する男の中の男だろう
少しズレているリザードンを尻目にゼニガメは言う

「じゃぁ見せて〜漫画やゲームと一緒なんでしょ?」

「え、ああ、うん…うん!?」

いやいやそれとこれとはまた違うとリザードンは焦る
しまった完全にしまった、これはいかん、万が一見せたとして後に変なもん見せてんじゃねぇえ!と怒声と共に襲い掛かるフシギソウの姿が目のに浮かぶ、かといって見せなければテメェなんで私の可愛いゼニちゃんに意地悪してんだぁあ!と言って自慢の髪で首を絞めにかかってくること間違い無しだ クソッどうする…どうするよ俺!
どーすんのよ!

うぐぐとリザードンが頭をフル回転させてこの状況を打破する事を必死に考える
が途端に頭が働かなくなり止まった



何故

水を

かけられた…?

ポタ…ポタ…と身体から滴が落ちる、リザードンの全てがびちょびちょになり雑誌も水に濡れて力なくだらりとへしゃ折りページとページがくっつく
何が起きたか分からず唖然とゼニガメを見つめる

「……え…?」
「…きっったない顔…」

今まで見たことのない冷たい目線に、低い声でボソリと言われる
その声と姿にリザードンは絶望した

…なん…で…?

怒る気にもなれず、笑う気にもなれず、何も言えず、ただゼニガメを見た
なぜだか泣きたくもなってきもした
意味が分からない、こんなにも、こんなにも必死に考えたのに、汚い顔と言われ見たこともない冷たい目線で見られた俺の心境はどんなものなんだろうか
リザードンは心が折れた
しかし次のゼニガメの行動でリザードンは更に唖然とする

「…ぅ…うわぁあああああん!ごめっ…うっく…ごめんなざあい!ぎらわないでぇええうわぁあああ!!」

いきなり目の前でゼニガメが大声でうわぁあああと大泣きし嫌わないでと謝罪をしだしたのだ

なんだこいつは、お前が嫌ったんじゃないのか、俺は今さっきお前に心を折られた後だぞ、泣きたいのはこっちだ!悪いが優しい言葉をはけるほど甘い奴じゃねぇんだよ俺は

「うわぁああああ!!ごめんなざいい!!ごめんなざいい!!嫌わないでぇえええ!」
「・・・」
「うえぇええ…!!うっく…ひっく…うぇ…うわぁあああああああん!!」
「あ゛ー!!!!もう分かった!分かったからほら、な!?嫌わないって!むしろ俺が嫌われたかと思ったわ、嫌われてないようで良かったよいやマジで!!」

持ってた雑誌を捨てゼニガメを引き寄せ頭をぐしゃぐしゃと撫でて肩で受け止めてやる、すると向こうは自然に抱き着いて来た
そのあと背中を撫で、落ち着かせるように軽く叩いてあやすと嘘のようにすぐに泣き止んでいき大人しくなる

「…おさまったか…?」

恐る恐るまた聞くとコクリと頷きリザードンから離れる、ふぅとため息をはきゼニガメと向き合う

「いったいさっきからどうしたんだおm…」
「なにゼニちゃん泣かしてんだこの変態ヤロオオオオ!!!!」
「ぐほっ…!」

斜め上から回転で更に力を増した飛び蹴りがリザードンの背中に見事に入る。

フシギソウが あらわれた !

あまりの衝撃にリザードンの背中から痛々しい音がなりゼニガメの前で倒れた、背骨何本か逝っただろう

「大丈夫ゼニちゃん!?どうしたの?こいつが何か酷い事したの?」

されたのはこっちですフシギソウさん
痛みが強すぎて声が出ない、フシギソウめこんな容赦ない蹴りをしやがって、オレはこんなにも嫌われてるのか、ちくしょう何がいけないんだ、あれおかしいな視界がボヤけてきたぞ

泣きながらやけくそ気味にハハハハと笑うリザードン
ゼニガメは気まずそうに下を向いて両手で涙を拭く
その様子を見てフシギソウは周りを見るとびちょぬれになった雑誌を見つけた、そして総てを悟ったかの様にハッとなりリザードンに向き直る

「まさかあんたゼニちゃんにこの雑誌と同じようなポーズを無理強いして泣かせたんじゃないでしょーねぇえ!この変態!!」

そんな落ちてたまるかと痛い背中を無理矢理起こし、叫ぶ

「んな事するはずねーだろ!そんなんだったらむしろお前にしてほしいわ!!」

フシギソウの葉っぱカッター並びにつるの鞭などその他諸々食らわし最後にハイキックをリザードンの顔面に入れ吹っ飛ばす
ゼニガメは何も言わずただその様子を眺めていた

「ゼニちゃん怖かったよね、すぐ助けに行けずにごめんね?」

とフシギソウが笑顔で言うとゼニガメは大丈夫ありがとうフシ姉、と少し微笑む

「もうすぐご飯の時間だから行こっか!」
「でもリザ兄は?」
「んー?大丈夫よ構わず行きましょ」
「…うん!」

ゼニガメとフシギソウは手を繋ぎ仲良さそうに歩いて行く
その後ろで虫の息のリザードンが横たわっていたそうな





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リザードンが可哀相なのは愛故です


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